ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第8回

全39話中、ウルトラマンが唯一脇役となった名作

古谷敏×やくみつる

不滅の10大決戦 第4位

棲星怪獣 ジャミラ 身長/50m 体重/1万t

【バトル・プレイバック】

 飛行中に地上のジャミラを確認したウルトラマン、万国旗のポール損壊を阻止しようと果敢にショルダータックル。その勢いで吹っ飛ぶジャミラ。すかさず立ち上がったところへ、ウルトラマンが少し腰の引けたフライングボディアタックを仕掛ける。しかし、その躊躇がジャミラに見透かされ、ウルトラマンの大技はヒットせず。逆に転倒したウルトラマンに覆い被さったジャミラは、マウントポジションから首へのチョーク攻撃。その怒涛の攻撃に耐え、体勢を入れ替えたウルトラマンだったが、ジャミラの下からの圧力に屈し、吹き飛ばされ転がされてしまう。そこで戦いは改めて仕切り直しの様相を見せ、くんずほぐれつの状態に。

 膠着の攻防を嫌ったジャミラはウルトラマンに向かい、走り込みながらのタックルを食らわそうとする。だが、ウルトラマンは “居反り” で投げ返し、見事にジャミラをビルにブチ当てることに成功。ここがチャンスとみたかウルトラマン、ジャミラの背中に飛びつき、後方からバーン・ガニアばりのスリーパー・ホールドを仕掛けるも、そもそも首がないのでうまく決まらず。またしても、くんずほぐれつの戦闘状態に。

 ここでウルトラマン、科特隊が放水攻撃でジャミラを弱体化させたのを思い出し、念力を利用しての “ウルトラ水流” を発射。猛烈な水を浴び、もがき苦しむジャミラ。それでも “ウルトラ水流” の勢いを止めないウルトラマン。咆哮をあげながら、うつ伏せに倒れ込み、のたうち回るジャミラ。最後は星条旗をつかもうと手を伸ばすも届かず、ついに力尽きてしまう(ジャミラの鳴き声、咆哮は赤ちゃんの泣き声の遅回し)。

 

やく ジャミラの断末魔の叫び声も含め、子供心にえらいものを見せられてしまった、という2分間でした。実際に現場で戦った古谷さん、いや、ウルトラマンの胸中には何がよぎったのですか。

古谷 全39話中、ジャミラとの戦いが一番辛かったですね。ウルトラマンを越え、古谷敏というひとりの人間としても辛かったです。

やく ええ。

ウルトラマンの首を絞めにかかるジャミラ。意外と腕の力が強く、インド象の5000倍の腕力がある

古谷 台本をいただき、読み込んだ時点で、これはちょっと辛すぎる――と思いました。この『故郷は地球』の全編に貫かれているテーマだと思うのですが、科学の発展のためには多少の犠牲はしようがないんだといった考え方……正論がすべて善かといえば、そうではないとの想いが拭い去れなかったです。

ホシノ はい。

古谷 僕ね、台本を読んだとき、すぐに「南極物語」のタロとジロを思い出したんですよ。幸運にもタロとジロは生き残りましたけど、他の犬は死んでしまった。あのとき、越冬隊員は犬が死んでも仕方ないと判断し、日本に帰国した。もちろん、彼らにも言い分はあったと思います。彼らなりの正義もあれば、状況的に置き去りにするしかなかったみたいな言い訳も。だけど、現実は置き去りにしたわけですから。その現実とジャミラがかぶさってきましたよね。科学の進歩という大義のためにジャミラは犠牲者となり、結局は殺されてしまう不条理が辛かった。

やく それが人類の正論ですし。

古谷 そうです。でも、それで本当にいいのかと50年以上のときを経ても、いまだに『故郷は地球』は問い続けていると思います。

やく 問い続け、いまだに私たちは答えを探し出せていない。

ホシノ いい例が沖縄の米軍基地問題じゃないですか。日本の平和安定のためには、沖縄の方々に犠牲を強いても仕方ないという風潮がある。じゃあ、どうすればよいのか。日本の平和維持と沖縄の苦しみを解消するよりよい方法や解決策を戦後70年以上経った今も見つけることができていません。

やく 私が第6位に選出したザンボラーも、同じような問題提起を含んでいたと思います。そもそもザンボラーは宅地開発など自然を壊してばかりの人類に激怒し、地上に現われ破壊活動を行なった。地球規模で考えれば人類とザンボラー、どっちが本当に悪いのかとなる。自分たちが快適な生活を送りたいがために、共存を考えず、必要以上に自然を壊した結果、平和に暮らしていた動物や鳥や昆虫の生きる場所を次から次に奪っていった。人間が快適に暮らす。それは人類からすれば当たり前のこと? 正義ですけども、それが本当の正義なのかと問われると、やはり疑問が生まれてしまう。

自然破壊を繰り返す人間に焔の鉄槌を食らわせるザンボラー。この灼熱怪獣もジャミラと同様に人類に対して“復讐”しようとしていた

古谷 実は、ソコなんですよ。僕がもうひとつ『故郷は地球』で言いたかったのは。この作品で当時の御大を筆頭にスタッフ、ウルトラマンに関わったすべての人たちが大きな志、使命感を胸に秘めていたことがわかるんですよね。

ホシノ つまり……。

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プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

 
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