平成消しずみクラブ 第10回

微眠みの午後

大竹まこと
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 私が流行のインフルエンザB型に感染する前、二月四日、日曜日、各紙の一面トップは目を疑うような見出しが躍っていた。
 後に、私の病名が確定し、一週間、テレビ、ラジオの仕事を休んだ。もちろん原因は他にあるのだが、各紙の見出しはそれほど衝撃的であったのだ。
 毎日新聞「非核攻撃 核で 反撃も」「トランプ政権 新小型核開発へ」
 東京新聞「米『核なき世界』を転換 トランプ政権 新指針 小型核兵器開発 使用条件緩和」
 朝日新聞「米『核なき世界』放棄 運用拡大へ 弾頭小型化」
 とあった。(日経・産経・読売は読んでいません)
 私は、膝がカックンと笑い、紙面に目が近づきすぎて、見出しまでが大きくボヤけた。
 新聞を持ち直した時、思わず真裏の三十面に目が行く。東京新聞の三十面は今日の運勢が載っている。
 四日 うし年
 多欲を凡人と言い欲に身を捨てるを狂人という。欲心を特に鎮め、とある。
 意味がわからず目を移すと、そこには五日の運勢もあった。新聞は五日が休みなので、その分も載せてくれているのだ。運勢が二日分。ありがたい。
 五日 うし年
 安全地帯に居るからと油断するな。勝って兜の緒を締める日、とある。
 私は、今日、明日とどう生きれば良いのか。

 また、紙面に焦点が合った。
「トランプ米政権は2日、中期的な核政策の指針である『核戦略見直し』(NPR)を発表し、オバマ前政権が目指した『核なき世界』の理想を事実上放棄した。(中略)小型核兵器の開発も明記。冷戦後から米露が続けてきた核軍縮の流れに逆行する新方針となった」(朝日新聞)とある。
 要するに、アメリカの核戦略が変わったのだ。
 もちろん、アメリカが変われば、世界も変わる。
 アメリカが現在保有する核兵器の多くは強力すぎて、使い勝手が悪い。ロシアなどからの攻撃に備えて、もっと使い勝手がよい小型核を作り、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用に爆発力を抑えた小型核弾頭の開発を進めるとした。
 使えない核から使える核への道を開いたのだ。
 核の小型化、使える核とはどういう意味だ。小型の核を使うと、どんな効果が得られるというのだ。何人が死ぬのか、何を小型というのか、本当に使う気なのか。
 オバマ前政権はあらゆる核実験を禁ずる包括的核実験禁止条約の批准を追求すると宣言し、「新たな核兵器の開発を行わない」ともしてきた。
 トランプ政権は、この点も転換するとしたのだ。今まで千回以上も核実験を繰り返してきたアメリカが「将来の核実験再開に含みを残した」とある。
 日本政府は三日、NPRを「高く評価する」との河野太郎外相談話を発表した。
 もちろん、反対の声もあがっている。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のフィン事務局長は、ツイッターで「トランプ大統領は、核兵器を格納庫から出して戦場で使うことに総力を挙げようとしている」と批判した。
 広島県原爆被害者団体協議会も長崎県原爆被災者協議会もである。

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連載では、シティボーイズのお話しはもちろん、現在も交流のある風間杜夫さんとの若き日々のエピソードなども。

プロフィール

大竹まこと

おおたけ・まこと 1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。現在、ラジオ『大竹まことゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。

 
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