『ファンタジー・オン・アイス』で、シンガー・Toshlとのコラボによる『CRYSTAL MRMORIES』と『マスカレイド』を披露した羽生結弦。その演技を見て感じたことを……。
特にステップで魅了する場面において、上半身の使い方が一層ダイナミックに、激しくなったのを感じました。肩や胸をグッと張り、腕も、明確に肩の付け根から動かしているのを意識しているような……。これまで以上に、アームの動きが、肩から指先まで「大きなひとつの波」のようにつながっているように感じられたのです。
そして、これが「2019-20年シーズンの、羽生結弦の持ち味」のひとつになるのではないか、と。
1年ほど前のことでしょうか。羽生結弦とステファン・ランビエールの対談を読んだことがあるのですが、その中で羽生が、
「バレエにあまり触れてこなかった」
という意味の言葉を残しています(私にはそれが少々意外だったのも事実です。ジュニア時代から本当に「踊れる」スケーターでしたから)。
しかし、この『ファンタジー・オン・アイス』で羽生が見せた上半身のダイナミックなムーヴを見て、
「ダンスの面でも、何か新しい取り組みをしている真っ最中なのかもしれない」
という印象を強く持ったのです。
『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。