日本人として名前の前に「世界の──」という形容詞が初めてついたのは、野球では「ノモ」だったし、サッカーでは「ヒデ」だった。ならば、スノーボードでは? それは「カズ」である。バンクーバー五輪で、公式ウェアを着崩し、国内で大バッシングを浴びたスノーボーダーの國母和宏だ。あれから8年余──。國母は「KAZU」のニックネームで、世界的なプロスノーボーダーになった。
雪山をノーヘルメットで一気に滑り降りる、バックカントリー。2016年は、もっとも権威のあるコンテストで「年間ベストビデオパート賞」を受賞し、この秋には、超一流の証明といっていい「シグニチャームービー(個人作品)」を発表した。その名も『神風 KAMIKAZU』。出演者と同時に監督のような立場で、個人作品として30分から40分のフルムービーを撮ることができたライダーは、歴史をひも解いても「数えるくらい」しかいないという。
自らをスノーボーダーとして「真面目過ぎる」と語る國母。その真意とは?
3、4分の映像に命をかける
──今はカリフォルニアに拠点があって、(滞在が)長いシーズンは、9カ月から10カ月もの間、海外で生活しているんですよね。
國母 11月終わりぐらいから海外でウォーミングアップを始めて、クリスマスに一度日本に帰ってきて、元旦から撮影を始めます。1月は北海道で撮影し、2月から5月までは海外で撮影してますね。忙しいときは、7月半ばから8月半ばまでアメリカで滑って、9月はニュージーランドで撮影したりもするので、家で過ごせるのは2カ月程度です。
──例年だと、そうして撮った映像をたった3分から4分にまとめていたわけですか……。
國母 たった3分か4分ですけど、ワンシーズン、命がけでやっても、なかなか満足のいくものはできない。(國母が映っている約4分の部分が受賞対象となり)「年間ベストビデオパート賞」をもらった「STRONGER. 」という作品も、映像プロダクションが20人ぐらいのライダーに出演を依頼してたんですけど、ムービーに出られるのは10人くらい。いい映像を残せないと出られないんです。
プロフィール
1988年生まれ、北海道石狩市出身。4歳からスノーボードを始め、2003年、わずか14歳でUSオープンの表彰台に立つ。06年トリノ、10年バンクーバーと2度の五輪出場経験を持つ日本スノーボード界の第一人者。16年に最も権威のあるコンクール「RIDERS POLL 18」で「年間ベストビデオパート賞」を受賞。