プラスインタビュー

スノーボーダーとして真面目に生きる【第1回】

國母和宏が譲れなかったこと
國母和宏

──プロスノーボーダーという存在が日本では馴染みが薄いのですが、まずは、どうやって生計を立てているのか教えてもらえますか。

國母 ボーダーには2つの生き方があって、Xゲーム(冬季競技などの世界最高峰の大会)のようなコンテストを中心にやってるアスリート寄りのボーダーと、俺のようにムービーを中心にやってるボーダーがいます。平昌五輪のスノーボード男子ハーフパイプで(平野)歩夢に勝って、オリンピックで3つ目の金メダルを獲得したショーン・ホワイトは、コンテストしか出ない。俺は逆に2012-13年を最後に、もうコンテストには出ていません。

──それまでは、映像と競技を並行してやっていたわけですよね。競技でも一流(最も歴史が古いUSオープンで2010年、2011年で連覇)、映像でも一流というのは、世界でも稀有な存在でした。

國母 でも今はコンテストの技もどんどん複雑になってきて、両立するのはもう無理ですね。どちらも中途半端になってしまう。今の歩夢は、俺がコンテストに出ていた頃よりも、はるかにすごいことやってますから。

──ちなみに、平昌五輪での平野選手とショーン・ホワイトの戦いは観ていましたか。

國母 観ていました。おもしろかったですね。

──一部では、2本目の平野選手の得点を、3本目のショーンの得点が上回ったのは、ミスジャッジではないかというも声もありましたが。

國母 いろいろな見方がありますからね。でも、俺はショーンのほうがよかったと思いました。グラブがボードをきっちりつかんでるかつかんでないかということを問題視している人もいましたが、スノーボードは指先をどアップで見る競技でもないし。下から全体を見て、どれだけいいかを判断すればいい。しかも、あそこまで追い込まれた中で、最後にあれだけの演技をしたわけだから。人間がジャッジしたら、絶対にショーンの勝ちにすると思いますよ。

次ページ   スタイルを捨てるぐらいなら、勝たない方がいい
1 2 3 4
次の回へ 

プロフィール

國母和宏

1988年生まれ、北海道石狩市出身。4歳からスノーボードを始め、2003年、わずか14歳でUSオープンの表彰台に立つ。06年トリノ、10年バンクーバーと2度の五輪出場経験を持つ日本スノーボード界の第一人者。16年に最も権威のあるコンクール「RIDERS POLL 18」で「年間ベストビデオパート賞」を受賞。

11月に初の個人DVD『神風 KAMIKAZU』(税込3,500円)発売。

集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル
プラスをSNSでも
Twitter, Youtube

スノーボーダーとして真面目に生きる【第1回】