ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第1回

「2020年からきた怪獣」ケムール人がウルトラマンに

古谷敏×やくみつる
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 スポーツ紙の芸能欄に載っていた1枚の写真。思わず目が奪われる。

 ウルトラマンが立っていた――。でも、何かが違う。なんだ、この違和感は! 

 あ、そうか、そういうことか。そのウルトラマンにはカラータイマーがなかったのだ。

 写真は来年公開が予定されている、庵野秀明が企画を務める『シン・ウルトラマン』の宣材らしく、成田亨氏の目指した本来の姿を志向した結果のデザインコンセプトのようだ。その他、今現在判明しているのは、主演が斉藤工ほか豪華キャストが揃い踏みしていることくらい。

 ただ、すでにネットを中心に期待は膨らみまくっている。なにせ企画・脚本が『エヴァンゲリオン』を生み出した庵野秀明だ。彼が総監督を務めた、あの『シン・ゴジラ』の完成度の高さをみれば、まったく新しい観点からのウルトラマンが作り上げられるのは間違いない。

 これまでのウルトラマン・ワールドの固定概念をぶち破る。その覚悟のひとつがカラータイマーなきウルトラマンになるのかも。

 それにしてもだ。カラータイマーがない。それだけで、どの世代も何かしらの反応を見せる。放送開始から54年が経ってもなお、ウルトラマンをキーワードに各世代が思い出に耽り、新しい感慨を抱く。

 まさにウルトラマンは【語り継がれる永遠の正義の味方】と評してもよいだろう。

 今やその人気と影響力は国内にとどまらず、アメリカ、アジア各国で頻繁に出演者たちのサイン会を中心としたイベントが催されているほど。ではなぜ、これほどまでに私たち……地球人の心の奥底にウルトラマンはどっしりと根を張り続けているのか。なぜ、50代、60代の日本人、いや地球人は今でもウルトラマンを目にすると胸が躍り、ときに涙してしまうのか。なぜ、若いネット世代は54年前の作品ひとつひとつに新しい見解を探し出し、積極的に語り合おうとするのか。

 そこで――。

 ウルトラマンに関する、多くの「なぜ」を解き明かすべく、ウルトラマンになった男、ウルトラマンの中に入りスーツアクターとして戦った古谷敏と、ウルトラマン・リアル視聴世代の代表として漫画家やくみつるが徹底的に語り尽くす『ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説』を開催。それもウルトラマンと怪獣、宇宙人との戦いにフォーカスした語り合いだ。

 なぜウルトラマンの戦いをテーマに語り合うのか。それは、ウルトラマンの戦いが単なる勧善懲悪ではなかったがゆえに、そこから何かが見えてきそうな予感がするからだ。

 ウルトラマンは何のために戦ったのか、何を守ろうとしたのか、それこそ戦うことが正義だったのか。

 さあ、今一度、54年前に。アーリー・ウルトラマンの世界へ。

 1966年7月17日午後7時の茶の間に戻ろう――。

 

 西暦2020年夏、私はウルトラマンに会った。ウルトラマンのスーツこそ着ておられなかったが、私の眼前に現われたその人は、ウルトラマンそのものであった。

 とてもスリムで高身長(40メートルこそないものの)。が、圧倒的にカッコいいシェイプより、まず私の目に飛び込んだのは、そのシュッとした鼻筋であった。瞬間、私は思った。こんなに鼻が高くて、マスクをかぶる際に邪魔にならなかったのだろうか。

 人間、強く緊張を強いられるときほど、こんな余計なことを考えるものなのか。その高い鼻の主は、もちろんウルトラマン=古谷敏さんである。古谷さんは、一瞬にして小学2年生に戻ってしまっていた私を、ことのほか優しく招じ入れてくれた(不遜にも私の方が入室が後だったのだ)。

 今、私はあの時のウルトラマンと正対している。もちろんこれからたくさんお話を伺わなければならないのだけれど、私の心のカラータイマーはとうに赤に変わり、このまま昇天しかねないほど打ち鳴らされている。

 それもそのはず。ウルトラマン初回放送時の昭和41年夏、私は東京都世田谷区立深沢小学校の2年生。前作ウルトラQとともに、ド真ん中の「Q、マン世代」なのだった。級友の多くがそうだったように、まぁ、ハマりにハマった。当時、私の家には脚付きの旧式の白黒テレビしかなかったが、その丸っこい小さな画面をそれこそ食いつくように視ていた覚えがある。家庭用ビデオなど考えもしなかった時代、初見で怪獣の絵を描けるようにしておきたい。その一心であった。もちろん少年まんが誌などではしばしばグラフ記事の題材にもなっていたし、それらを参考にも出来たはずだが、まだ貧しかった時代、少年誌は床屋の待ち時間に読むのがせいぜいで、必然的に、放映一発勝負での怪獣観察であった。そのおかげが、今でも大概のQ、マンの怪獣はソラで描くことができる。

 そんなド真ん中世代にとって、ウルトラマン本人に会ってお話を伺える。まさに光の国からの贈り物。コロナ禍でろくに外へも出られず、鬱々と巣籠もりを強いられるはずだった2020年夏に、突如舞い込んだ重大任務。それが私のまったくの独断で選んだ「ウルトラマン10大決戦」をもとに、ウルトラマン=古谷敏さんに死闘を述懐していただく。当時のマスクの下の荒々しい息使いが、ソーシャルディスタンスを置いた数メートル先から聞こえてくるような、生々しい証言の数々。当時をリアルで体験した同輩諸氏はもちろん、後年ウルトラマンに魅了されていった、若い世代の方々にも是非お楽しみいただきたい。

(追記) 冒頭、大仰に書きだした「2020年」は、古谷敏さんをウルトラマン起用へと導いたケムール人がタイムスリップの起点とした「未来」でもある。時は流れ、その「未来」が「現実」となったその年に、ケムール人本体とも出逢えた奇跡も、実はウルトラマンと対面したのと同様に、感極まれる一大事なのだった。

                             やくみつる

 

ホシノ 全国3000万人(推計)のウルトラマン、特撮ファンのみなさま、こんばんは(日テレアナウンサー時代における徳光和夫のプロレス実況中継風に)。今宵からお届けするのはウルトラマンvs怪獣の壮絶な格闘シーンにスポットライトを当て、10位から栄光の1位までのランク付けにトライした『ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説』でございます。

 この歴史に残る、画期的な試みに参戦していただくのは「Q、マン」世代の代表として、今回のベスト10を選定した漫画家のやくみつるさん。そしてもう御一方は『ウルトラマンになった男』、そうです、ウルトラマンのスーツの中に入り、全39話、地球の平和のために戦い続けた不屈の男、古谷敏さんです!

古谷 そんな大袈裟な(笑)。

ホシノ そして司会進行は私、科学特捜隊の準隊員ホシノ少年……ではなく、ホシノ中年が務めさせていただきます。といっても、本物のホシノ少年(演/津沢彰秀)ではございません。放送当時、ホシノ少年は11歳の設定、あれから54年も経つわけで、すでに初老といったほうが正しいのかもしれませんが、ま、本編では無断で科特隊専用車に乗り込み、現場に同行した際、連絡係を任せられていたりしていましたから、今回の司会進行もうってつけではないか、と。

古谷 今でもお元気ですよ、津沢さんは。ウルトラマンのイベントなどで、たまに会います。

ホシノ それはそれは、お元気でなによりです。というわけで、以上、3名で『ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説』をお届けしてまいります。なにより、やくさん。

やく はい。

ホシノ ウルトラマンと怪獣の格闘シーンだけに特化した解説はこれまでに――。

やく なかったように思います。私の知る限り、書籍などでもなかったはず。

ホシノ ですよね。ウルトラマン誕生秘話などを追った解説本やウルトラマンの世界観を描いた書籍、怪獣・宇宙人のカタログ雑誌などは目にしますけど、ウルトラマンがなぜ、あの怪獣に対して相撲技を出さねばならなかったのかを解説した本はありません。

やく けっこうマニアックな相撲技を繰り出しているんですよ(笑)。

ホシノ というわけで、この対談では、そういう戦い方、技の出し方、決戦中の心理状態にまで追いかけて考察していきたいと思っています。というのも、実はウルトラマンの戦い方が、のちの各分野、映画とかアニメとか、いろいろなところに刺激と新たな創作を与えていることが判明しているからなのです。その詳しい話はおいおい順位の発表とともに明らかにしていきたいと思いますが、まずは本題に入る前に、やくさん、今年2020年といえば……。

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第2回 

プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

 
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