さあ前回、前夜祭をお送りした新連載、ウルトラマンと怪獣の格闘シーンにスポットライトを当て、10位から栄光の1位までをランク付けしようという「ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説」。今回からはいよいよランキングの発表でございます。
決戦模様を語っていただくのは、ウルトラマンのスーツアクターとして怪獣と実際に戦った古谷敏さん、リアルタイムでウルトラマンを見ていた「Q、マン世代」代表の漫画家やくみつるさん、そして司会進行は科学特捜隊の準隊員ホシノ少年……ではなく、ホシノ中年が務めさせていただきます。いったいどの怪獣が10位となったのか…?
ホシノ では、発表いたします!
やく その前に。
ホシノ はい。
やく 改めてベスト10選出における私なりの選択基準を説明させていただくと、前回、説明があったように、ウルトラマンと怪獣たちの戦い、格闘という面にフォーカスし、重きを置いて順位を決めました。なので、印象度で選べばベスト10内に選ばれていてもおかくない人気怪獣との戦いが、まさかの落選ということもございます。人気怪獣でも、ウルトラマンの圧勝であったり、特段見るべき攻防がなかったりしたものは、泣く泣く落選させてしまったというわけです。
古谷 面白いと思います、そういう見方、こだわりは。
やく ただ、戦いに重きを置きますけども、それだけで終わらせる気など毛頭なく(笑)その戦いから何を感じ取ったか、感じ取れるのか、さらに新発見に至るまで、視線をワイドにし、語り合っていければとも願っております。
ホシノ では、お待たせの第10位の発表! ドロロロロロ~(ドラムロール)10位はナント、最終戦とでもいうべきゼットンとの戦い!
古谷 ほう。
ホシノ 最終回のゼットン戦を10位に選ぶのは、なんとも“やくみつる”らしいと言いますか。
やく 別に奇をてらったのではないんですね。私らが初めて目のあたりにした、ヒーローの最後。それは胸に手をやり、仰向けに倒れている宗教儀式的な、まさに棺桶に収められているイメージ。あのとき、古谷さんは何を思われていたのか、胸に何が去来したのか。それを解明したいとの想いから、格闘シーン云々よりも10位に選んでしまったんです。
古谷 最終回でもありましたし、とても複雑な心境でしたよね。これは『ウルトラマンになった男』(小学館刊)でも書きましたけど、撮影が始まった当初は正直、ウルトラマンの中に入るのは乗り気ではなくて。冗談じゃない、スーツの中に入って怪獣と戦うなんて役者の仕事じゃないよって思っていましたし。
しかも、連日の撮影がハードでね。例えば夏の撮影ではスーツの中の温度はたぶん、50℃くらいはあったんじゃないですか。熱中症どころの騒ぎじゃない(笑)。当時はスーツを着て3分か5分経ったところで監督に×印を送っていましたよ、これ以上は無理という意味でね。そこで撮影は一旦、ストップ。スタッフが私のもとに集まり、急いでスーツを脱がしてくれる。で、そのまま上半身裸で撮影所を飛び出し、頭から水をかぶる。そんなことの繰り返しでした。だから、このままでは自分の体が持たない、いや、その前に心が壊れるかもしれないと思っていましたよ。
やく それでもウルトラマンを続けていたのは子供たちの期待、目の輝きだったと『ウルトラマンになった男』でお書きになっていましたが。
古谷 そうなんです。
やく もう辞めよう、明日辞めようと思っていたときに、たまたま一緒にバスに乗り合わせた小学生たちが目を輝かせながら、前夜放送されたウルトラマンの話をしていて──。
古谷 その目の輝きを裏切れないと思いましたね。同時に、子供たちがあんなにも熱く語っているウルトラマンを演じている誇りとでもいえばいいんですかね。よし、もっと頑張らなければ、と誓ったんです。それからは前向きでね、ウルトラマンでいることに。次の怪獣ではどんな戦いを繰り広げようかと新しい台本を手にするたび必死に悩み、考え込んで。あの経験があったからこそ、なんだろう、人間というのは自分が他者から求められていることがわかったとき、身も心も成長できるのだな、と実感できました。
ホシノ それなのに。
古谷 そうなんですよ、それなのに39話で終了と言われ(笑)。
プロフィール
古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。
やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。