徳光和夫の昭和プロレス夜話 第6夜

「受け身の高千穂」「エリート坂口」、印象に残る日本人レスラー

徳光和夫
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 名アナウンサーを前にして、こんな話題を取り上げるのはいかがなものかと思うのですが、しゃべり、語りといえば、最近話題になっているのがレスラーの滑舌の悪さ。

 

「天龍関とか?(笑)」

 

 はい。でも、少し不満なのは滑舌の悪さの双璧といわれているのが、天龍さんと長州さんというのがですね、納得いかなくて。

 

「他にもいらっしゃる?」

 

 います。坂口征二さん!

 

「そうでしたかねえ」

 

 レスラーの滑舌の悪さのランク付けをするならば、第4位は長州さん。

 

「へえ、4位なの?」

 

 もちろん聞きづらいですよ、長州さんも。ただ、長州さんはエキサイトすると何を言っているのかわからなくなるだけで、普段はそれなりに何をしゃべっているかくらいは聞き取れます。

 

「ニュアンスはわかります」

 

 第3位は天龍さん。

 

「はい、はい」

 

 天龍さんの場合も、ノドが潰れてしゃがれている分、聞き取りずらいだけで、そのしゃがれを意識しないようにすれば、それなりに会話は成立します。

 

「(笑)」

 

 第2位は前田日明さん。みなさん、前田さんの名前を出さないですけど、実は最強に滑舌が悪い。いや、正しくは語尾の滑舌の悪さが史上最悪なんですッ!

 

「(笑)」

 

 そのせいで最終的に前田さんが何を言いたいのか、さっぱりわからないことがあったりします。たまに聞き返すと、すっごく嫌な顔をされるので、そのままスルーするしかないのですが、そういう場合は前後の会話をよく精査して前田さんの言いたいことを推理しなきゃいけない。

 

「大変ですねえ」

 

 なんとか推理できるようになるまでに5年はかかりますね。

 

「でも、その推理が外れたことはないんでしょう?」

 

 おかげさまで。

 

「たいしたもんだ(笑)」

 

 で、栄えある第1位は坂口さん。よくぞあの尋常じゃない滑舌の悪さで新日本プロレスの社長業務が行なえたのか不思議。たぶん、前田さんと会話をするボクのように、側近の人たちは必死に推理していたんでしょうね、坂口さんが何を言いたいのかを。それほどまでに何を言っているのかさっぱりわからない。もしかしたら、坂口さんって宇宙人で火星の暗号でもしゃべってんのかなと真剣に疑いました。

 

「(笑)。そういえば、日本プロレスに坂口さんが入団してから、プロレスの風景も少し変わりましたよね」

 

 というのは?

 

「それまでの日本プロレスは他の業種のいわゆるドロップアウト組ばかりだったじゃないですか。力道山は相撲、馬場さんはプロ野球、でも、坂口さんは柔道日本一の金看板を背負って堂々と入団してきましたからね、プロレス界に」

1967年にロサンゼルス・オリンピック・オーディトリアムで行なわれた坂口征二対ジン・ラーベルの柔道ジャケットマッチ。ジン・ラーベルの名前でピンときた人は年季の入ったプロレスファン。そう、猪木対アリ戦を裁いたレフリーだ。 写真/宮本厚二

 

 そうだそうだ、坂口さんといえば、週刊誌の取材で2017年にインタビューしたとき、とても興味深い事実を語ってくれまして。

 

「その話は聞き取れたんですか?(笑)」

 

 はい、なんとか。聞き取れなかったところは何度も確認しながら。かなりぶ然とされていましたが。

 

「ええ、ええ(笑)」

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プロフィール

徳光和夫

1941年、東京都生まれ。立教大学卒業後、1963年に日本テレビ入社。熱狂的な長嶋茂雄ファンのためプロ野球中継を希望するも叶わず、プロレス担当に。この時に、当時、日本プロレスのエースだった馬場・猪木と親交を持つ。

 

 
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