徳光和夫の昭和プロレス夜話 第7夜

デストロイヤー、ブロディ…忘れじの外国人レスラー

徳光和夫
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「逆に、悪役レスラーだったのに、リング外では非常にインテリジェンスだったのが、ブルーザー・ブロディでしたね」

 ブロディと徳光さんに接点があったんですね。

「まず、息子がブロディの大ファンでして。私も全日本プロレス中継の特番に招かれた際に、何度かお目にかかり、いろいろと話をさせていただいて」

 ブロディは元教師ですし、思慮深いところがありましたから。

「常に冷静でね。暴走ファイターに見られがちでしたけど、自分の闘いを俯瞰して見ることができるレスラーでしたもんね。自分が闘っている様子を観客がどう感じているか、どの技を出せば観客は驚くか、戦慄するか、ちゃんと計算した上で闘っていました。彼はインテリジェンス・モンスターと呼ばれていましたけど、まさにその名に恥じない男でした」

 それと、あのナチュラルなパワー。

「ええ、ええ。リソワスキーとブルーザーのナチュラル・パワーをブロディが受け継いでいましたよね」

超獣ブルーザー・ブロディ。ドリー・ファンクJr.とのインター戦でリング上に乱入した素人のドリーの長男をフライング・ニードロップ一発で血反吐まみれにしたシーンは今でも語り継がれている.。 写真/宮本厚二

 

 あのパワーを見せられちゃうと、一度でいいから総合のリングで闘わせてみたかったと幻想を描いてしまいます。

「うちの息子も同じようなことを言っていましたよ(笑)。ブロディなら総合の選手の打撃にも対応できたでしょうし、関節技を仕掛けられても、上からペシャッて潰すことができたんじゃないですかね(笑)。そういう幻想を今でも私たちに抱かせてくれますね、ブルーザー・ブロディという選手は」

 そのブロディを全日本プロレスから新日本プロレスに引き抜いた、というか口をきいたのがアブドラ・ザ・ブッチャーだったのですが。

「ブッチャーねえ……。彼が当時付き合っていたのは日本の方でしたよ」

 ええ、はい。

「けっこう日本人の女性と付き合っていたり奥さんにしている外国人レスラーって多いでしょ」

 古くは銀髪鬼フレッド・ブラッシー。

「スタン・ハンセンもそうですもんね。でも、なぜ日本の女性を選ぶのかなあ」

 アメリカのレスラーに訊くと、彼らの離婚の最大の原因は遠征で家を空けてしまうことらしいんですね。長期間家を離れるせいで、奥さんは寂しがり、それが相互不信につながり、その結果、離婚に至ると。その点、日本の女性は古くから、そこらへんのところが寛容でしょ。浮気で家を離れるわけではなく、お仕事でいない場合、きちんとその間、家を守ってくれる。2か月でも3か月でもお仕事をして家に帰れば、ちゃんと温かく迎え入れてくれる。そういうところに外国人レスラーは魅かれているんじゃないですか。

「なるほどねえ」

 えっと、話はブッチャーに戻すと。

「一度、彼の宿泊しているホテルで取材したことがあるんですが、ベッドの上で寝転がっていました(笑)。リングコスチュームのステテコみたいなズボンのままで。ただ早口で何をしゃべっているのか、よくわからなかったですよ。たまに〝シュワワチュガシ〟といった、彼曰くスワヒリ語みたいな言葉を使うんですけど、それがまた怪しくてね(笑)。こっちはブッチャーが生粋のアメリカ人だってわかっているのに、あくまでもスーダン生まれだと言い張りますしね。子供の頃はスーダンの星と呼ばれていたとか言っていましたけどねえ、ウソつけって(笑)。

 そういう作り話をいちいち日本人の彼女が健気に通訳してくれましてね。そういう感じでしたから、馬場さんも扱いにくいレスラーだと困っていました。とにかくコトあるごとにギャラアップを要求してきたみたいで。自分の要求が通らなければストライキまで起こそうとしていたらしい。まあ、日本での自分の人気というものを冷静に分析していたんでしょうね。それも全日本プロレスから新日本プロレスに移り、そしてまた全日本に戻った頃は、馬場さんに感謝していたのか、随分と丸くなっていましたが。馬場さんの言うことにはすべて従順でしたよ」

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 第6夜

プロフィール

徳光和夫

1941年、東京都生まれ。立教大学卒業後、1963年に日本テレビ入社。熱狂的な長嶋茂雄ファンのためプロ野球中継を希望するも叶わず、プロレス担当に。この時に、当時、日本プロレスのエースだった馬場・猪木と親交を持つ。

 

 
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