ホシノ さて、第8位の発表を。
古谷 いきなりですね(笑)。
ホシノ はい。この対談、前フリが長すぎるといった反省もございますし、他にも決戦の解説と謳っているわりには、バトルの検証が少し乏しいのではないか、という声も踏まえまして、第8位はできるだけウルトラマンvs怪獣の戦いにフォーカスした内容をお届けしたく。
古谷 なるほど。
ホシノ てなわけで、やくみつるが選んだ栄光の第8位は……。
やく (食い気味に)ケロニア戦!
ホシノ はいっ、早速、戦いを振り返ってみましょう!
不滅の10大決戦 第8位
吸血植物 ケロニア 身長50cm~50m・体重80g~1万t
【バトル・プレイバック】
ハヤタが建物の中で変身したため、ビルを破壊しながらウルトラマン登場。そこにケロニアが突進。ウルトラマン、華麗に右にかわしながら、チョップ攻撃。その一撃でケロニア、ビルに突っ込む。めげないケロニア、再度のスピアー(タックル)を仕掛けてくるところをウルトラマンがアマレスの俵投げ。倒れたケロニアに飛びかかるも逆にマウントポジションを取られ、手痛いパンチ攻撃を食らう。互いにマウントポジションの奪い合いの末、斜め方向に巴投げを試みるウルトラマン。すぐに両者はファイティングポーズを取り、互角のパンチ攻撃を繰り返したのち、今度は完璧な巴投げでケロニアを吹っ飛ばすウルトラマン。
ヤバッと思ったのか、ケロニア、ここで目から必殺の破壊光線発射。ウルトラマン、それを見事に光線白刃取り、からのお返しのスぺシウム光線。見事にケロニアの心臓付近に命中するも効かず。なぜ効かぬ? 戸惑いの表情を浮かべたウルトラマンだが、弱気の心を振り払うかのように強烈な右ハイキック一閃。なんと、ケロニア、そのキックを左手で防御しながら、お返しの右ストレート。この一発、意外にも重たいパンチだったようで、後方に吹っ飛ぶウルトラマン。勝機と見たケロニアはすかさず再びマウントポジションになり、肉体的にも精神的にも優位に立とうとするが、そうはさせじとウルトラマン、なんとか踏ん張り立ち上がる…がケロニアの羽交い絞め攻撃に。気がつくと、カラータイマーは赤に点滅。
なんとかしなければとウルトラマン、羽交い絞めを首投げで脱出。おりゃっと続けざまにドロップキック。そして、秘密兵器・ウルトラアタック光線発射(両腕に発生した高熱エネルギーを右腕に集中させ、リング状に光線を放つ)。ついにケロニア、左手と両ひざをつき、ウルトラマンが胸の前で手をクロスさせると大爆破。だが、戦いは終わらず。勝利の余韻を味わうことなくウルトラマンはすぐさま空へ。逃げるケロニア軍団のエアシップコンビナートをスぺシウム光線で次々に撃破し、完全勝利を収める。
ホシノ やくさん、なぜにケロニア戦を第8位に?
やく ウルトラマンの技が冴えまくっているんですよ、このケロニア戦は。それに体の動きもキレッキレッ。
古谷 ケロニア戦の頃は、スーツで動くことに慣れてきた時期というか、だから軽やかに見えているのかも知れないです。実際、思ったように激しく動けた一戦でした。
やく 技が冴えている、と言いましたけども、実に多彩な技を繰り出しています。【バトル・プレイバック】で確認できるだけでも、チョップ、パンチ、キック、エルボー、背負い投げ、巴投げ、羽交い絞め外しからのドロップキック、光線白刃取り、スぺシウム光線は効かなかったんですが、初公開のウルトラアタック光線まで繰り出す大サービス。
ホシノ そのウルトラアタック光線、ケロニア戦でしか繰り出していません。そういう意味ではレアかも。
やく 以上を踏まえ、39戦の中でも技の多彩さは群を抜いていますね。大人になってから、そういえばウルトラマンってどんな戦いを繰り広げていたかな、と思い出すとき、その多くはケロニアとの戦いの中で放たれた技の数々だったりします。ということは、きっとこのケロニア戦は子供心、とくに少年の心に何かを響かせた一戦だと思うんですよ。
ケロニアは人気の高い怪獣とはいえませんけど、ウルトラマンとの攻防がいつまでも心に残っている――という点で第8位にしました。思うに、この10大決戦は人気怪獣との戦い云々の視点ではなく、むしろケロニア戦のような戦いこそが選ばなければいけないのではないか、と。
プロフィール
古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。
やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。