ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第4回

ジェームス・ディーン、ウルトラマン、そして新世紀  エヴァンゲリオンへと受け継がれたもの

古谷敏×やくみつる

ホシノ それはそうと、古谷さん。

古谷 はい。

ホシノ ひとつ確認したいことがあります。ケロニア戦でも見せていましたが、独特な猫背の前屈みのファイティングポーズ。

古谷 はい。

ホシノ あれはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の初号機のファイティングポーズと一緒だということはご存知でしたか?

古谷 はい、知っていました。以前、円谷プロのスタッフに教えていただきましたから。

ホシノ 『新世紀エヴァンゲリオン』を観たことは?

古谷 あります。初号機を観て、まんまウルトラマンだな、と(笑)。好きですからねえ、庵野秀明監督はウルトラマンを。

ホシノ 2016年にNHK BSプレミアムで放送された『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』という番組で庵野監督がインタビューを受けていて、こんな発言を残しているんです。

「『面白いものを作りたい』ということしかないですね。で、その『面白いもの』とは何か?ということになると、もうこれは子供の頃にたまたま『ウルトラマン』を観たことで決められてしまったとしか言えないです。それだけ子供の頃に受けたインパクトは強烈で、自分で消したりいじったりできません。『ウルトラマンみたいなものを作りたい』というのが、自分の創作に対するモチベーションの何割かを占めているのは確かですし、たとえば『ウルトラマン』じゃないものを作りたいと考えた場合でも、そこには『ウルトラマン』という基準が存在するわけですからね」

 重要なのは、この『ウルトラマンという基準』のような気がします。つまり、これって創造のリレーをしているのだと思うんですね。昭和のウルトラマンの創作のキラメキが平成のエヴァンゲリオンのキラメキに繋がり、そして令和の『シン・ウルトラマン』(庵野秀明企画・脚本/2021年公開予定)に繋がっていく。ひとつの作品が時を経て綿々と受け継がれ、その意思は別の作品にも受け継がれ、別の形で光を放ち、人々を熱狂の渦に巻き込んでいる――。

古谷 身震いするほど、素敵で魅力的な創作のリレーだと思いますね。その観点から言えば、私も若き日に観たジェームス・ディーンの『理由なき反抗』から、あのポーズを作り出したわけでね。初めてジェームス・ディーンが猫背でナイフを構えた姿を映画館で観た時は衝撃的でしたもの。ゾクゾクッとするような青年の色気と刹那的なやるせなさに心が湧き立ちました。その衝動がウルトラマンのファイティングポーズとなり……。

ウルトラマンといえば、この独特な猫背のファイティングポーズ。ジェームズ・ディーン→古谷敏→エヴァンゲリオンへと受け継がれていった

ホシノ エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジに受け継がれ、また『シン・ウルトラマン』に繋がっていく、と。

やく その『理由なき反抗』なのですけど。古谷さんが衝撃的だったとおっしゃったジェームス・ディーンのナイフを持っての喧嘩のシーン。相手は不良学生のバズという男だったのですが、ひとつの裏話として、お互いのナイフを本物にしようということになったみたいで。

古谷 そうだったんですか。

やく それで撮影スタート。緊迫したやり取りの中で、ついにジェームス・ディーンの耳がバズのナイフによって切られ図らずも出血してしまった。そこで監督のニコラス・レイがカメラを止めた。すると、カメラを止めたことにジェームス・ディーンは「せっかくリアルだったのに、止めるな!」と怒鳴ったらしいんですよ。もしかしたら、ジェームス・ディーンも撮影中、俳優としてのある種の「ゾーン」に突入していたのかも知れません。

古谷 こちらの「ゾーン」の話も、うまいこと繋がりましたね(笑)。

(第7位は10月30日に発表予定)

司会・構成/ホシノ中年こと佐々木徹

撮影/五十嵐和博

©円谷プロ

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プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

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ジェームス・ディーン、ウルトラマン、そして新世紀  エヴァンゲリオンへと受け継がれたもの