韓国カルチャー 隣人の素顔と現在 第1回

またしても世界的な大ヒット、ドラマ『今、私たちの学校は…』

しかし韓国国内の評価は分かれる。そしてホラーは苦手な人への特別解説
伊東順子

ゾンビ映画を怖がらずに見る方法

 

 実のところ、このドラマに対する私自身の評価はすっきりしない。シーズン2が準備されているということなので、そちらを見た後であらためて考えたいとも思う。ただ、1つだけ「すごいな」と感心したのは、この作品がパンデミック下に作られたということである。これだけではなく、『イカゲーム』、『地獄が呼んでいる』などの世界的ヒット作もすべて、韓国政府による厳しい行動制限や感染対策の中で製作されたのである。

 とくに『今、私たちの学校は…』の群衆シーンは生身のエキストラが参加しており、三密どころでない濃密な身体接触が行われている。この2年間、韓国でも大小の感染爆発は繰り返されており、2020年の夏には一時期、本作や『イカゲーム』などの撮影が中断されたこともあった。ただ、その後は検査や検温などの基本的な感染対策で、撮影をこなしてきた。その胆力はすごいものだと思った。

 はたしてどんなふうに撮影が行われたのだろうかと気になって、ドラマのメイキングなどを見たのだが、そこで印象的だったのはゾンビたちの練習風景だった。Kゾンビともいわれる韓国のゾンビ特有の動きは、念入りな演技指導と訓練の賜物だったのである。それと同時に気づいたのは、メイキングを見てからだと、その残酷な場面はあまり怖くないということ。なかでも保育園に登場する子どもゾンビたちの稽古風景は可愛らしいばかりで、その後に見た本番はむしろ微笑ましく感じたほどだ。

 なるほどホラーは先にメイキングを見てしまう。邪道な方法だろうが、どうやって見ようが、どんな感想を持とうが私の自由。ということで、とりあえずシーズン2を待ちたいと思っている。

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第2回  

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プロフィール

伊東順子

ライター、編集・翻訳業。愛知県生まれ。1990年に渡韓。ソウルで企画・翻訳オフィスを運営。2017年に同人雑誌『中くらいの友だち――韓くに手帖』」(皓星社)を創刊。著書に『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)等。『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』(集英社新書)好評発売中。

 

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