【短期連載】ある音楽家の "ステイホーム" 第6回

ステイホーム ~外の世界~

「弾き籠る」生活の日常と非日常に思いを馳せる

黒田映李

 

「5、日本のオーケストラ団員事情」

 とある日本の主要オーケストラメンバーとして活躍されている、音楽家の大先輩。緊急事態宣言発令からしばらく経った今日、今回に当たっての心境を丁寧に語ってくださった。

 第1クールの最終章には、その手記を置きたいと思う。

 

 ……

「オーケストラはその団体により、活動内容が少しずつ異なります。しかし基本的には演奏会として、“バレエ”“オペラ”“交響曲”“協奏曲”で構成される公演が置かれており、その公演前には、公演と同じ人数だけプレイヤーが集まり、リハーサルが行われます。

 オーケストラプレイヤーはリハーサル開始前に、演目について自主的な勉強と練習を積み、予習を終えた状態でリハーサルに臨みます。予習をした作品での公演が終わると、また次のプログラムに備えます。そして、また次、次… と、延々とその繰り返し。毎回、コンサートプログラムを最善のコンディションで演奏出来るよう、常に努力をしています。

 そんなルーティーン下で起きてしまった、コロナ禍に寄る、相次ぐ公演キャンセル。コンサートスケジュールというものが大方、3月末には日本中で消えてしまいました。そして発令された、緊急事態宣言。これによって、演奏活動に完全なるとどめを刺されてしまいました。

 

 いつになったら活動再開となるのか、途方に暮れて過ごす、4月、そして、5月… 

 

 …現場がなくなり、今、行っていること。

 いつ再開しても対応出来るように、通常時と同じ個人練習をすること。そして、オーケストラ活動以外の、かなり先に決まっている個人コンサート演奏の為の準備をすること。また、音楽大学以外の、大学オーケストラや社会人オーケストラ等への、無償オンラインアドバイス配信をすること。

 自身の士気が衰退しないように、そして明るい未来を目指して、1日1日を消化して今を過ごしています」

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【短期連載】ある音楽家の

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、その最初期から影響を被った職業のひとつが、芸術を生業とする人たちであった。音楽、絵画、演劇……。あらゆる創作活動は極めて個人的な営みである一方で、大衆の関心を獲得することができぬ限りは生活の糧として成立し得ない。そんな根源的とも言える「矛盾」が今、コロナ禍によって白日の下に晒されている。地域密着を旨とし、独自の音楽活動を続けてきたあるピアニストもまた、この「非日常」と向き合っている。実践の日々を綴った短期連載。

プロフィール

黒田映李

愛媛県、松山市に生まれる。

愛媛県立松山東高等学校、桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ科を卒業後、渡独。ヴォルフガング・マンツ教授の下、2006年・ニュルンベルク音楽大学を首席で卒業、続いてマイスターディプロムを取得する。その後オーストリアへ渡り更なる研鑽を積み、2014年帰国。

現在は関東を拠点に、ソロの他、NHK交響楽団、読売交響楽団メンバーとの室内楽、ピアニスト・高雄有希氏とのピアノデュオ等、国内外で演奏活動を行っている。

2018年、東京文化会館にてソロリサイタルを開催。2019年よりサロンコンサートシリーズを始め、いずれも好評を博す。

故郷のまちづくり・教育に音楽で携わる活動を継続的に行っている。

日本最古の温泉がある「道後」では、一遍上人生誕地・宝厳寺にて「再建チャリティーコンサート」、「落慶記念コンサート」、子規記念博物館にて「正岡子規・夏目漱石・柳原極堂・生誕150周年」、「明治維新から150年」等、各テーマを元に、地域の方々と作り上げる企画・公演を重ねている。 

2019年秋より、愛媛・伊予観光大使。また、愛媛新聞・コラム「四季録」、土曜日の執筆を半年間担当する。

これまでにピアノを上田和子、大空佳穂里、川島伸達、山本光世、ヴォルフガング・マンツ、ゴットフリード・へメッツベルガー、クリストファー・ヒンターフ―バ―、ミラーナ・チェルニャフスカ各氏に師事。室内楽を山口裕之、藤井一興、マリアレナ・フェルナンデス、テレーザ・レオポルト各氏、歌曲伴奏をシュテファン・マティアス・ラ―デマン氏に師事。

2009-2010ロータリー国際親善奨学生、よんでん海外留学奨学生。

ホームページ http://erikuroda.com

 

 

 
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