ガザの声を聴け! 第38回

日本の“冬の時代”

清田明宏
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そのような国連機関で仕事をする日本人、特に今回米国の資金援助凍結で未曾有の危機を迎えるUNRWA(ウンルワ)の職員の取材と応援を兼ねて、東京にある国連広報センターの広報官がヨルダンとパレスチナの取材に来てくださった。

 

その広報官の歓迎会を、ヨルダンの我が家で開いた。ヨルダンにいる日本人国連職員のほとんどの方が集まった。

 

当日集まった、ヨルダンで働く日本人国連職員、11人中8人が女性なのだ。当日参加できなかった方は3人いたが、そのうち2人が女性、1人が男性だ。つまり、14人中、10人が女性。7割強が女性だ。私の経験からいえば、国連機関で働く日本人職員の間の、この高い女性比率は例外ではない。

 

今は日本人職員がどんどん増えている。特に若い方が増えている。皆優秀で、海外の大学院で勉強された方が多い。そして、その殆どが女性だ。一緒に食事をすると、男性が私だけなんてことがよくある。

 

何故であろうか? 何故、日本人国連職員には女性が多いのだろうか。

 

少し昔になるが、2014年5月に英国の世界的経済誌、エコノミスト(Economist)が日本の女性について特集記事を載せていた。原題は「Holding back half the nation」、翻訳すると、少し意訳になるが、「国の半分が(後ろに)引っ張られている」だろうか。原題の説明(サブタイトル)は、「日本の職場では女性の地位が低く、その状況は今まで数十年変わっておらず、日本が低迷する理由になっている」。

 

記事に使われているイラストも衝撃的だ。かつて囚人などを拘束する際に使われた足かせと鉄球が女性の足首に鎖でつながれている。鉄球は赤い色だ。エコノミスト誌はよく、刺激的で、非常にデフォルメしたイラストを使う。その一種だが、考えさせられるイラストではある。

 

この記事を簡単にまとめると、日本は先進国の中では女性の労働・経済参加は他の先進国と比べて非常に低い(記事では63%)。そして、女性が最初の子供ができたときにはその7割が仕事をやめる。この率は米国では3割に過ぎない。

 

その理由として、日本では女性の社会進出、あるいは女性が活躍できる環境の整備が非常に遅れていることをエコノミストの記事は指摘している。会社が基本的に男性社会を中心に動いている。それとともに、結婚して家庭に入ることを良しとしている女性が日本では先進国の中で格段に多いことも理由としてあげている。

 

私はこの記事の正確性・妥当性を議論できる専門家ではない。ただ、この記事を読んで、以前からの疑問、なぜ国連の日本人職員は殆ど女性なのか、が浮かんだ。ひょっとして関係しているのではと思い、知り合いの日本人女性職員、数人にメールを送り、意見を聞いてみた。

 

その返事が象徴的で、皆、この記事の通りである、とのことだった。変わっていない、というお話が多かった。ある方は、「私が働いていて、いやになってやめた時の(日本の職場の)状況から全く変わってないのですね」と話されていた。

 

ある人は、しみじみ、こう話された。「私が大学を出て最初に入った会社で、すぐに歓迎会があり、そこで一番最初にやらされたのが上司とのチークダンスだった。ものすごくイヤで、その会社はすぐにやめた」と。

 

個々の状況は違うであろうし、記事に書かれた日本の社会の状況が、すぐに日本人の国連職員に女性が多い理由にはならない。ただ、象徴的ではある。

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ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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