データで読む高校野球 2022 第4回

センバツ2022は近畿勢と左腕の大会?準決勝の見どころを分析

ゴジキ

100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに感情論や印象論で語られがちである。そんな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。全6回にわたって、「春の甲子園」こと選抜高等学校野球大会(以下 センバツ)について様々な側面から分析していく。

第4回目は今大会で輝いた近畿の2校と左腕の好投手たちを紹介しながら、準決勝の見どころを解説する。

 

近畿勢が8大会連続ベスト4入り!ね100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに感情論や印象論で語られがちである。そんな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。全6回にわたって、「春の甲子園」こと選抜高等学校野球大会(以下 センバツ)について様々な側面から分析していく。

 

第4回目は今大会で輝いた近畿の2校と左腕の好投手たちを紹介しながら、準決勝の見どころを解説する。

 

 

 

近畿勢が8大会連続ベスト4入り!熱戦を繰り広げた金光大阪と市立和歌山

3月19日(土)に開幕したセンバツも、いよいよ3月30日(水)の準決勝と31日(木)の決勝を残すのみとなり、ベスト4が出そろった。なかでも注目は、今年も大阪桐蔭と近江の近畿勢2校である。この2校が準決勝まで勝ち残ったことにより、センバツにおいて8大会連続で近畿地区の高校がベスト4入りしたことになる。

 

下記が過去8大会の結果だ。

(左から、優勝、準優勝、4強 ※2022年を除く)

 

2014年 龍谷大平安(近畿) 履正社(近畿) 豊川(東海) 佐野日大(関東)

 

2015年 敦賀気比(北信越) 東海大四(北海道) 大阪桐蔭(近畿) 浦和学院(関東)

 

2016年 智弁学園(近畿) 高松商(四国) 龍谷大平安(近畿) 秀岳館(九州)

 

2017年 大阪桐蔭(近畿) 履正社(近畿) 秀岳館(九州) 報徳学園(近畿)

 

2018年 大阪桐蔭(近畿) 智弁和歌山(近畿) 三重(東海) 東海大相模(関東)

 

2019年 東邦(東海) 習志野(関東) 明石商(近畿) 明豊(九州)

 

2021年 東海大相模(関東) 明豊(九州) 天理(近畿) 中京大中京(東海)

 

2022年 大阪桐蔭(近畿) 近江(近畿) 浦和学院(関東) 国学院久我山(東京)

 

今回のセンバツを含めると、8大会中5大会は近畿地区から複数の学校がベスト4入りしており、さらに2014、2016、2017、2018の4大会では優勝している。2010年代半ばから現在まで「近畿勢の時代」が続いているといっていいだろう。

今大会でいうと、準々決勝で敗退したものの、近畿地区をから選出された金光大阪と市立和歌山の健闘ぶりも注目された。

 

とくに注目すべきは、延長13回に及ぶ激戦になった金光大阪対木更津総合の2回戦である。金光大阪は古川温生、木更津総合は越井颯一郎とエース同士の対決となり、9回までお互い1点しか許さない投手戦で試合が進んだ。延長に突入した段階では、エースの古川しか計算できる投手がいない金光大阪よりも、2番手3番手投手がいる木更津総合のほうが有利であるように見えた。しかしそれを覆すかのように、金光大阪は古川を完投させることを選び、木更津総合は13回の投手交代が裏目に出てサヨナラ負けを喫した。土壇場での踏ん張りが勝負の明暗を分けたいっていいだろう。金光大阪がいる大阪府では、大阪桐蔭・履正社の2強状態が続いているが、それゆえ他の高校のレベルも年々上がっているようにみえる。金光大阪の場合、2009年のセンバツ以来甲子園からは遠ざかっていたものの。2018年夏の北大阪大会準々決勝で、その年春夏連覇を果たした大阪桐蔭を、細かい継投によって苦しめたことでも知られる。甲子園常連校ではなくとも、大阪には戦術や選手のレベルが高い学校があるということを、金光大阪の快進撃で思い知らされる。

 

同じく市立和歌山も、昨年夏優勝を果たした智辯和歌山や、甲子園の常連、和歌山東がいる激戦区で戦ってきた学校だ。昨年のセンバツでは、DeNAにドラフト1位で指名されたエース小園健太と、同じくロッテから1位指名を受けた正捕手松川虎生を擁したが、2回戦敗退。夏は県大会決勝で智辯和歌山に負け、甲子園出場を逃すなど、悔やまれる結果となった。今年は小園、松川バッテリーがいた前年より、個々の選手の力が劣るとも言われていたものの、1回戦では優勝候補でもあった花巻東に勝利。この試合でエースの米田天翼は、注目スラッガーの佐々木麟太郎を核とする強力打線を徹底的に抑えた。強準々決勝では大阪桐蔭に敗れたものの、米田を中心にチームが奮起し、昨年を超えるベスト8入りを決めた。

ただ、金光大阪も市立和歌山も1人のエースに頼る属人的なチームである。そのため、準々決勝はそれぞれエースが大量失点し敗れたが、古川と米田の2投手のポテンシャルの高さは全国に知れ渡った。

夏の大会は日程も過密になることから、1人の投手に頼ることはより難しくなるだろう。この2校にはチーム全体のさらなるレベルアップに期待していきたい。

 

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100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに、感情論や印象論で語られがちな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。3月に6回にわたってお届けしたセンバツ編に続いて、8月は「夏の甲子園」の戦い方について様々な側面から分析していく。

関連書籍

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プロフィール

ゴジキ

野球著述家。 「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心に100本以上のコラムを執筆している。週刊プレイボーイやスポーツ報知などメディア取材多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターも担当。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』(インプレスICE新書)、『坂本勇人論』(インプレスICE新書)、『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(カンゼン)。

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