8月17日に『世界大麻経済戦争』(矢部武・集英社新書)が発売された。同書は、「医療用」「産業用」「嗜好用」の分野において大麻が世界中で合法化され、ビジネス展開が行われている現状をレポートするもの。そこで浮き彫りになったのは、日本だけが突出して「大麻禁止」が厳しいことだ。
本の発売を記念し、日本で医療用大麻解禁の活動を行っている医師の正高佑志氏をお迎えし、矢部氏と対談を行ってもらった。後編の今回は、日本における医療用大麻の現状と展望についてである。
前編( コチラから)では、世界の「大麻経済=グリーンラッシ
矢部 不合理な厳罰主義を貫こうとする日本の「使用
しかし、将来的に取締り対象から大麻が除外されるとしても、
正高 そうした管理の方向へ力を向ければ、むしろ今よりも業務内容が増
矢部 こうした厚労省の動きは、国際保健機関(WHO)の勧告で、昨年末
補足すると、この大麻原料の医薬品使用解禁は、「難治性てんかん
正高 THCを含むサティベックスについては、おそらく日本では麻薬扱
矢部 医療用麻薬として、「モルヒネ」のような扱いですか。
正高 はい。そうすることで、すでにある医療用麻薬の規制や管理ルール
アメリカの現状をみると、ほとんどの患者たちが、大麻草の全体と
矢部 つまり、乾燥大麻を医薬品として使うという発想は頭にない……。
正高 ないでしょうね、残念ながら。現段階で厚労省は、そういうものを
矢部 そうすると、韓国で採用されたシステムに近いのですか?
正高 韓国では、処方箋薬として世界中に流通する大麻由来製品を、厳密に審
で、日本の場合は、とにかく2020年末のWHOによる医療用大
海外での大麻治療「メディカルツーリズム」が本格化する
矢部 しかし、今後、医療大麻の使用を許可する展開になれば、これまで
正高 まあ、その部分については何事もなかったかのように、シレッと意
矢部 いずれにしろ大麻の薬効を少しでも認めれば、今までのような危険
正高 政府関係者が海外の大麻事情を徹底的に視察し、実際には医療用と
アジア圏ではタイなどが「メディカルツーリズム」の受け入れに熱
矢部 そういう海外医療機関で大麻治療を受けて良い成果を得た日本人が
正高 2017年から始めたGZJは、基本的に医療大麻やCBDについての科学的
それらの虚偽性は本当にひどいもので、例えばアメリカで大麻入り
矢部 誰かがやらなければならないとわかっていても、いざとなると皆が
CBDを使ったてんかん治療相談を全国からオンラインで受付中
正高 大麻使用罪の新設を検討するに際して厚労省側も、一応は「有識者会議」なるものを組
矢部 回答者4000人以上! それならば非常に精度が高く信頼性に足る調査データが得られたことでしょうね。
正高 ええ。実に貴重で興味深い集計結果が導きだされました。4138名の大麻経験がある回答者のうち、問診上で大麻依存症に該当する恐れがあると考えられたのは全体の8.3%でした。この数字は酒やタバコの依存率よりずっと低いものです。また厚
GZJの発足初期には主に海外の研究資料を翻訳紹介していま
矢部 現在、日本国内でも使用できるということで注目が集まっているCBDにお話をもどします
正高 最も劇的に効果があるのはやはり「てんかん」でしょう。ただしGZJの発足初期には、日本
しかしてんかんの治療に必要な量は、サプリメントとして服用する量よりも多いので、GZJではCBDを原価格で調達し、主に子供のてんかん患者に提
矢部 現在の正高先生の活動拠点は熊本市ですが、他地域に住む
正高 もちろんです。WEBサイト上で「みどりのわ」を検索して連絡してい
矢部 それぞれ主治医の先生に許可をとるわけですね。その
正高 もちろん、中には首を縦にふらない先生もおられますが、てんかんの領域では「
矢部 私もアメリカの取材で、てんかんだけでなく、従来の療法で治らな
正高 今のところ「みどりのわ」の対象はてんかん一本に絞っていますが、他の病気につ
矢部 お話を聞いて、ますますGZJの活動の素晴らしさを再認識しま
最後になりますが、正高先生の著作中にある「一日の終わりに疲れやストレ
ありがとうございました。
プロフィール
矢部武(やべ たけし)
1954年、埼玉県生まれ。国際ジャーナリスト。70年代半ばに渡米し、アームストロング大学で修士号取得。帰国後、ロサンゼルス・タイムズ東京支局記者を経てフリーに。銃社会、人種差別、麻薬など米深部に潜むテーマを描く一方、教育・社会問題などを比較文化的に分析。主な著書に『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)『大統領を裁く国 アメリカ トランプと米国民主主義の闘い』『携帯電磁波の人体影響』(集英社新書)、『アメリカ病』(新潮新書)、『人種差別の帝国』(光文社)『大麻解禁の真実』(宝島社)、『日本より幸せなアメリカの下流老人』(朝日新書)。
正高佑志(まさたか・ゆうじ)
1985年、京都府生まれ。熊本大学医学部医学科卒。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年に医療大麻に関するエビデンスに基づいた情報発信を行う一般社団法人Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事として研究・啓蒙活動に従事している。