アメリカ型防災とキューバ型防災
2017年9月にハリケーン「イルマ」がアメリカ・フロリダに上陸したとき、350万人の住民を対象に避難命令を出したら、その倍近い650万人が避難した。逃げすぎて混乱したことが問題になるくらい、逃げているんです。なぜこんなに逃げるかというと、「自分の命は自分で守る」という徹底的な主体性があるから。政府がこう言ったとか、関係ないんですよ。危ないと思ったら懸命に逃げる。これは「アメリカ型防災」といえるかもしれません。
それと違う意味ですごいのが、キューバです。2005年8月のハリケーン「カトリーナ」では、アメリカのニューオーリンズ周辺では約2000人の死者が出たのに、キューバはゼロ。米国上陸時より勢力が強かったにもかかわらずです。去年キューバへ行って調査をしたのですが、官民挙げて国家の一大事に向かい合う、という体制がしっかりできているんですね。避難命令が出ると直ちに避難所(妊婦用、老人用、障がい者用含む)が開設される。医師、看護師、住宅、食料、水、医薬品、そして獣医まで配備される。軍がバスを出して全員を連れ出し、誰もいなくなった所を軍隊が警備する。家屋被害が出ると資材を届けてくれる。これが「キューバ型防災」。
もちろん、それらを日本がそのまま真似できるわけではありません。アメリカ人の徹底的な主体性は、反面で銃社会の問題につながるものでもあるし、キューバとは、そもそも国家の体制が違います。
それでも日本は、「自分の命は自分で守る」アメリカ型の防災、官民挙げて連携するキューバ型の防災、その両方から学ぶべきものがあると思う。日本の国民には命を守る主体性が欠けているし、一方で、行政が情報を出せば「出しすぎだ」と言うように、官民の連携がまるでとれていない。このままでは、荒ぶる気象災害にまともに向かい合える国にはならないな、と痛切に思います。