対談

宮治が『笑点』に出るようになってわかった。一之輔「芸人が売れるって、こういうことなんだな」

春風亭一之輔×桂宮治

売れるってのは、こういうことなんだな

──『笑点』に出るようになると、高座(落語をするときに上がる、いちだん高い場所)から感じられる客の雰囲気も変わるものですか。
宮治 自分の独演会とかは同じですね。昔から来てくれている人がほとんどなので。でも、地方へ行ったりして、新しいお客さんの前でやるときは、パンダ見物に来ているような感じはありますね。「あら、ほんとにいるじゃない。あれがパンダよ」みたいな。
一之輔 やりいい?
宮治 やりにくくはないですけど。
一之輔 自分は何者かという説明はいらなくなるよね。
宮治 それはそうですね。今まではマイナスからスタートしていたのが、プラス10くらいのところからは入れる。
一之輔 ただ、宮治がよく言う「どこの誰だかわからないようなやつに盛大な拍手をありがとうございます!」ってセリフが受けなくなってきた。

宮治 あれ、口癖なんで、つい出ちゃうんです。
一之輔 みんな「誰だかわかってるよ」って。なんで、微妙な笑いになる。袖から眺めてて、ああ、売れるってのは、こういうことなんだなって思った。自虐ネタが通用しなくなるんだよね。こんな雑な扱いを受けたとか、こんな貧しい暮らしをしているとか。「『笑点』出てるくらいなんだから、金あんだろ?」って思われちゃう。でも、宮治は、もともと貧乏噺はあまりしてないか。
宮治 あんまりしないですね。二ツ目の頃、貧乏エピソードばっかり話していたら、女性のお客さんに言われたことがあるんです。「しみったれた話ばっかりされると応援したくなくなっちゃうから、やめてよ」って。そっから、あんまりやらなくなりました。
一之輔 自虐ネタって手っ取り早くウケるから、ついやっちゃうんだよね。でも、やり過ぎると、聴いている方は辛い。ある意味、人の不幸を笑っているわけだから。
宮治 笑ってる自分が嫌になるんでしょうね。
一之輔 いい客だね、その人。いいこと言うな。

<第2回へ続く

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プロフィール

春風亭一之輔×桂宮治
春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)

1978年、千葉県生まれ。落語家。日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。2012年、21人抜きの抜擢で真打昇進。2010年、NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞を受賞。2012年、2013年に二年連続して国立演芸場花形演芸大賞の大賞を受賞。寄席を中心に、テレビ、ラジオなどでも活躍。

桂宮治(かつら みやじ)

1976年10月7日、東京都品川区出身。2008年2月、桂伸治に入門。2012年3月、二ツ目昇進。同年10月、NHK新人演芸大賞受賞。2021年、5人抜きの抜擢で真打昇進。「成金」メンバーでは三代目柳亭小痴楽、六代目神田伯山に続く、単独での真打昇進披露となる。2022年より日本テレビ系『笑点』の新メンバーに就任。

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