対談

一之輔「売れてる芸人は9割方、目が笑ってない」 宮治「本物と偽物の違い」

春風亭一之輔×桂宮治

宮治の口上書きなんか、どうでもいいじゃない

一之輔 いや、気弱になるときもありますけどね。忘れちゃうんですよ、すぐに。「なんで、さっき、あんなに気にしてたんだろう」って。嫌なこととか、言われることもあるじゃない。
宮治 嫌なことなんて言われることもあるんですか。
一之輔 ありますよ。客から何か言われたりね。でも、そんな人間とは付き合わなきゃいいだけだし。相手が年上だったら「この人、おれより先に死ぬんだ」と思ったら屁でもない。
──宮治さんの真打ち昇進のとき、口上書き(祝いの言葉を記した冊子のようなもの)を一之輔さんが書いて、そのときも先輩からちょっとお小言を言われたとか。
一之輔 お小言というか、いちおう公式的な意味合いのあるもんなんでね。普通はもっと年配の、それなりの役職にある人間が書くものなんです。なので「組織として前例がない。おまえが書くと、お前が協会の代表者のような受け取り方をしてしまう人もいるから、そういうときは相談してくれ」って。別に怒られたってほどのことじゃない。
宮治 いや、あのときは本当に迷惑かけてました。兄さんは「本当におれでいいの?」って何度も確認してくれたのに、僕が落語協会のところまで気を使えなかった。
一之輔 まあ、どうでもいいじゃないかと思ったけど。
宮治 いやいや。
一之輔 宮治の口上書きなんか、どうでもいいじゃないって。

宮治 ん? えっ! そっち?
一之輔 冗談ですよ。
宮治 ビックリしたー。
──でも本当にいい口上書きでしたよね。ジョークを効かせつつ貶めて、かつ、それが最大の賛辞にもなっているという。
一之輔 自分でも書いてて涙が出ましたね。
宮治 悔し涙でしょう。なんでこいつのために、って。
一之輔 いや、こんなに一生懸命書いてんのにギャラなしなんだな、って。
宮治 そこかい!

<最終回へ続く

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プロフィール

春風亭一之輔×桂宮治
春風亭一之輔(しゅんぷうてい いちのすけ)

1978年、千葉県生まれ。落語家。日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。2012年、21人抜きの抜擢で真打昇進。2010年、NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞を受賞。2012年、2013年に二年連続して国立演芸場花形演芸大賞の大賞を受賞。寄席を中心に、テレビ、ラジオなどでも活躍。

桂宮治(かつら みやじ)

1976年10月7日、東京都品川区出身。2008年2月、桂伸治に入門。2012年3月、二ツ目昇進。同年10月、NHK新人演芸大賞受賞。2021年、5人抜きの抜擢で真打昇進。「成金」メンバーでは三代目柳亭小痴楽、六代目神田伯山に続く、単独での真打昇進披露となる。2022年より日本テレビ系『笑点』の新メンバーに就任。

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