ジャニーズアイドルの歌の魅力
――ジャニーズのアイドルたちとこれだけたくさん共演してきた方は、武部さん以外にあまりいないような気がします。ジャニーズのなかでとくに印象深いボーカリストは誰ですか?
武部 やはり歌を聴いた回数も、レコーディングでアレンジした曲数も多いですから、その思い入れも含めてKinKi Kidsは特別です。ただ堂本剛くんと堂本光一くんのふたりは、歌に対するアプローチの仕方も違うし、違う表現力を持っている。それが面白いですよね。光一くんはどこまでも明るい王子様で、だからエンターテイナーとして『SHOCK』みたいなミュージカルを成功に導けた。剛くんは彼自身が“硝子の少年”ですから、どこかに屈折した思いみたいなものがあって、その暗さが歌ににじみ出ています。
それなのにふたりで声を合わせると、ハーモニーの一体感が生まれて、たまにどっちの声かわからなくなるときがあるんですね。ソロで歌っているところはもちろんわかりますよ。でもユニゾンで歌ったり、ハモって歌ったりすると、「あれ、剛? 光一?」って戸惑うことがある。不思議なもので、そういうときは似て聴こえるんです。
――コンビネーションの妙なんでしょうね。
武部 そこはジャニー喜多川さんの先見の明だと思います。あのふたりを組ませようと考えたことが、ジャニーさんの天才的なところですよ。ジャニーズのアイドルたちの歌を聴いて、もしかしたら手厳しいことを言う人もいるかもしれません。だけど僕はそれぞれが魅力的なボーカリストだと思っています。人前に出て人気を得るということは、それだけ人の心をつかめるということですよね。そこには技術とはまた違う観点から見た魅力があるはずです。
ジャニーズの場合、グループが多いのが特徴ですね。グループというのはソロと違い、全員で声を出したときのユニゾンの響きが気持ちいいかどうか、それが大きなポイントです。SMAPにしても嵐にしても、5人で声を出したときのユニゾンの響きがすごくいい。その瞬間にSMAPの色、嵐の色ができあがります。そういうものがグループならではの魅力じゃないでしょうか。そのメンバーの組合せを、ビジュアルだけでなく、歌や踊りも含めて考えたジャニーさんって本当にすごいですよね。
プロフィール
武部聡志(たけべ さとし)
作・編曲家、音楽プロデューサー。国立音楽大学在学時より、キーボーディスト、アレンジャーとして数多くのアーティストを手掛ける。
1983年より松任谷由実コンサートツアーの音楽監督を担当。
一青窈、今井美樹、JUJU、ゆず、平井堅、吉田拓郎等のプロデュース、CX系ドラマ「BEACH BOYS」「西遊記」etcの音楽担当、CX系「僕らの音楽」「MUSIC FAIR」「FNS歌謡祭」の音楽監督、スタジオジブリ作品「コクリコ坂から」「アーヤと魔女」の音楽担当等、多岐にわたり活躍している。
構成・文:門間雄介(もんま ゆうすけ)
ライター/編集者。1974年、埼玉県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。
ぴあ、ロッキング・オンで雑誌などの編集を手がけ、『CUT』副編集長を経て2007年に独立。その後、フリーランスとして雑誌・書籍の執筆や編集に携わる。2020年12月に初の単著となる評伝『細野晴臣と彼らの時代』を刊行した。