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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【最終回】

ナイツ 塙宣之インタビュー
ナイツ 塙宣之

コンビ結成の年=M-1スタートの年。M-1と共に芸歴を重ねながら優勝には届かなかった関東芸人、ナイツの塙宣之が語るM-1必勝法。最終回は、ツッコミ全盛の「お笑い日本代表」を斬る!

ボケづらい世の中

──話はやや変わりますが、昔は漫才と言えば「ボケが華」でしたが、今の漫才は「ツッコミ全盛」だと言われています。

 南海キャンディーズの山ちゃん(山里亮太)が最近、『天才はあきらめた』という本を出版して、めちゃめちゃ売れてるみたいですけど、彼は紛うことなき天才ですよ。山ちゃんが出て来てから、ツッコミの概念が変わっちゃいましたから。ツッコミで笑いを取るっていうのは、あそこから生まれたんだと思うんです。ただ、南キャン以降、野球で言うと「クセ球」が増えてしまった。ツッコミが、まともなストレートを投げてこなくなってしまったんですよ。そこへいくと、ダウンタウンの浜田(雅功)さんとか、ネプチューンの名倉(潤)さんなんかは本格派ですから、「うるせえよ」とか「アホか」みたいな感じですよね。でも、クセ球を投げてくるやつは、こっちがせっかくわけわかんないことをやってんのに、「塙さん、さっき楽屋ですごい真面目な本を読んでたじゃないですか」とか言ってくる。ボケづらい世の中になったもんです。

──でも、それによって笑いが倍加することもあるんですよね。

 ボケのタイプにもよるんでしょうけど、ツッコミのワードでボケが潰されていることもたくさんありますよ。今、現役バリバリの漫才師の中では、いわゆる本格派のツッコミをしているのはサンドウィッチマンの伊達(みきお)さんくらいじゃないですか。伊達さんは「本当ばかだな」っていう、めちゃめちゃ速いストレート系のツッコミが主ですから。僕なんかは、伊達さんと一緒にいるとすごく気持ちいいんですよ。僕のボケって、基本的にそれだけで点を取りにいくボケだから、「うるせえよ」くらいでいいんです。相方の土屋(伸之)は根が優しいので、「塙さんね、こんないい加減なこと言ってますけど、本当はすごく真面目な人なんです」とか言っちゃう。どっちかっていうと、山ちゃんタイプなの。そうすると、こっちも「ん?」って固まっちゃうんです。

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言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか

プロフィール

ナイツ 塙宣之

芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。2008年度以降、3年連続でM-1グランプリ決勝に進出する。漫才新人大賞大賞、お笑いホープ大賞大賞、NHK新人演芸大賞大賞、第9回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、浅草芸能大賞新人賞、第10回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、第68回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、浅草芸能大賞奨励賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。集英社新書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』、8/9発売!

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