あなたが信じる健康の「常識」は、本当に正しいものなのだろうか?
科学的根拠に基づいて、誤った常識を塗り替える医療エッセイ、
今回のテーマは「ダイエット」。
【誤った常識】
とにかく摂取カロリーや
糖質を減らせばやせる
同じカロリーでも、体重への影響は違う
テレビをつけると数多くの「ダイエット法」に関する情報が溢れており、本屋に行くと、どのようにすれば効果的にやせることができるかが書かれた本が山積みになっている。それらの中にはきちんと科学的根拠(エビデンス)に基づいたものだけでなく、個人の経験に基づいていて他の人でも同様の結果が得られるのか不明なもの、そもそもやせる要素の無いデタラメなものまで含まれており、文字通り玉石混淆の状況である。
効果の無いダイエット法にお金や労力を投入することは無駄であるだけでなく、やり方を間違えると健康を害してしまう可能性すらある。美しく効果的にダイエットするためにも、何が正しくて何が正しくないのか見分ける力が重要だ。
はじめに断っておくと、この記事では効果的にやせることができると考えられる「食事」に関して説明する。ダイエットのもう一つの重要な要素である「運動」に関しては今回は説明しない。食事と運動は同じくらい重要なので、くれぐれも食事だけ変えればやせられるとは思わないでほしい。
さて、本屋で売れているダイエット本を見てみると、(1)斬新な方法で、(2)楽にやせられるとうたっているものが多い印象を受ける。おそらくその方が話題性があって本が売れるからだろう。ダイエットの基本から言うと、摂取したカロリーよりも消費したカロリーの方が多ければ人間はやせる。シンプルな「引き算」である。
確実にやせたいのであれば、摂取カロリーを効果的に減らす方法か、もしくは消費カロリーを増やす方法を身に付けるべきなのだ。しかし、あまりにも当然すぎて、もし「やせたければ摂取カロリーを減らせ」というタイトルの本があったとしても、おそらく誰も手に取らないだろう。一番正しい内容の本が売れず、目新しくて話題性があれば内容が正しくなくても売れるというのは何とも皮肉なことである。
摂取カロリーを減らせばやせるとか、脂質の摂取量を減らせばよいとか、糖質制限がやせるという類の話はおそらく皆様は聞いたことがあるだろう。しかし同じカロリーや同じ糖質量であっても、体重への影響は違う可能性があることは知っているだろうか?
テレビ、本、ネット……健康についての情報に触れない日はない。 だが、あなたが接している健康の「常識」は、本当に正しいものなのだろうか? 確かな科学的根拠に基づいて、誤った常識を塗り替える医療エッセイ。
プロフィール
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授。
東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)・博士号(PhD)を取得。
聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。
著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)がある。
ブログ「医療政策学×医療経済学」