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確かなエビデンスに基づいて、誤った常識を塗り替える医療エッセイ、
今回のテーマはアイコスなどの「加熱式タバコ」。
「加熱式タバコは普通のタバコよりマシ」と
主張する人もいるが、本当だろうか。
【誤った常識】
アイコスなどの加熱式タバコは、
普通のタバコよりも害が少ない
都条例で合意できなかった加熱式タバコ
二〇一八年六月、東京都は従業員のいる飲食店を原則として禁煙とする「受動喫煙防止条例案」を議会で可決した。国の規制と違い店舗面積に関係なく原則として店内禁煙とするため、国よりも厳しい規制であるということができるが、それでも世界的には標準的な規制である。この条例により、都内の84%の飲食店は屋内禁煙になると推定されている。
今回の規制で議論されたものの最後まで合意に達することがなかったのが、加熱式タバコの扱いである。加熱式タバコは健康被害が明らかになっていないとして、加熱式タバコ専用の喫煙室も認めたうえで、飲食もできるようにした。これをエビデンス(科学的根拠)の切り口で検証してみよう。
エビデンスという考え方は医療において、1990年代に導入された。それまでは医師個人の経験に基づいて診断や治療方針が決められていたものの、それではあまりに医師間のばらつきが大きすぎて、患者が最良の医療を受けられていない場合が多かった。そこで研究結果からデータに基づくエビデンスを作り、それに基づいて医師と患者が相談をしながら意思決定するモデルが形作られた。これを「エビデンスに基づく医療(EBM)」と呼ぶ。
エビデンスによって白黒付いている時には話はシンプルである。患者の価値観とエビデンスを総合的に判断し、患者にとって最良の医療を提供すれば良い。
ただ問題なのは、エビデンスが不十分な時である。患者の病気は待っていてくれない。医師は「エビデンスが無いので分かりません」と投げだすわけにもいかない。不確実性のある中でも、医師は「エビデンスが不十分なので確定的なことは言えませんが、現時点で分かっていることを総合的に判断すると〇〇ということが言えます」とその時点における最善のアドバイスをする必要がある。
加熱式タバコはまさに「エビデンスが不十分な中でどのように判断するべきか」の好例である。
出典:WHO
テレビ、本、ネット……健康についての情報に触れない日はない。 だが、あなたが接している健康の「常識」は、本当に正しいものなのだろうか? 確かな科学的根拠に基づいて、誤った常識を塗り替える医療エッセイ。
プロフィール
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授。
東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)・博士号(PhD)を取得。
聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。
著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)がある。
ブログ「医療政策学×医療経済学」