プラスインタビュー

コロナ禍で再注目される ウェブによる政治参加 【後編】

株式会社PoliPoli 伊藤和真さんインタビュー
伊藤和真

前編ではウェブを通して政治を変えることの新たな可能性をお聞きした。それぞれのイシューを批判はなく、応援していくことで実現させていくというPoliPoliの思想が語られた。実はPoliPoliのような、ITの力で政治を動かす試みはPoli Tech(ポリテック)やCivi Tech(シビテック)と呼ばれ世界中で注目されている。市民の要望をアプリケーション上で集める行政サービスや、同じ政策を進めるための仲間を集めるSNSなど、その内容は多岐にわたる。

後編では、伊藤和真さんがアプリケーションを作り始めたきっかけから、政治とITのかかわりの現在地と展望をお聞きする。

 

伊藤さんが初めて作ったプラットフォームは、俳句投稿アプリケーション『俳句てふてふ』だとお聞きしました。そもそもアプリを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

 

高校生のときはダンスばかりやっていたのですが、受験勉強をしているときに『源氏物語』を初めて読んで、貴族の人々が和歌で恋愛する文化を知ったんです。そうした姿が、現代の恋愛より魅力的に思えて、自分でも俳句を作るようになりました。ただ、周囲に俳句をやる友達が一切いなかったんです。でも、もし俳句を投稿するプラットフォームがあれば自分みたいな人がたくさん集まってくるのではないかと思いつき、大学に入学してからアプリ制作を始めました。

2017年にリリースしてみると、登録者数がいきなり数千人規模で増えていったので驚きました。しかも、気づいたら知らない人たちがアプリを通じて俳句のコミュニケーションをし始めたんです。その状況をみて、インターネットは無機質で怖い場所だと思われているけど、実はあったかいコミュニティなのではないかと思いました。「俳句てふてふ」を作ったことで、インターネットの持つ力や可能性を感じたんです。だから仮にこのアプリが失敗したり炎上していたら、PoliPoliも存在しなかったと思います。

 

その翌年の2018年2月には株式会社PoliPoliを設立されます。前編でもおっしゃっていたように、2017年の衆議院選のときに演説をしていた国会議員と話したことがきっかけで政治に興味をもたれたとのことですが、なぜプラットフォームを作ろうと思ったのでしょうか。

 

政治が社会の根本を作っているものだと気がついたからです。ただ、そのことがあまり伝わってないというか、自分とすごく離れたところに政治があるように感じたんです。だからまず、生活と政治を近づけるためのプラットフォームを作ろうと考えました。

政治とは社会全体が意思決定する行為です。だから、若い人が参加しないだけでも、社会の意思決定がゆがんでしまう。そういう状況だと全員が幸せにならないですよね。僕の人生の目標は、自分も含めて世の中の人を幸せにすることなので、社会の意思決定をできるだけ正しくして世の中を幸せにしたいと思ったんです。

 

PoliPoliを立ち上げられるときに多くの人から反対されたとお聞きしました。それでも政策提言のプラットフォームを作ろうとした動機はなんだったのでしょうか。

 

大企業も国もやらないことだと思ったからです。実際に、99%くらいの人に反対されましたし「政治プラットフォームでなければ出資する」と言われたことがあります。たしかに政治系のサービスで成功した前例がないので、リスクが高いと思う人が多いのは当然です。

しかし20代で失敗したとしてもまだやり直しがきくので、そこまで大きなリスクだとは思いませんでしたし、なにより自分ならいいサービス作ることができるという根拠のない自信があったんです。
またPoliPoliをリリースする際に起業をしたのは、政治を変えるために持続性が必要だと思ったからです。例えば、市民団体や学生団体であったら金銭的な面で続けることが困難になることもありますし、活動を拡大するのが難しい場面が多いですよね。だから、社会に対して大きなインパクトを打ち出すためにも、会社として資金を確保しながらサービスを運営しています。

 

「政治系プラットフォームはリスクが高い」と言われる理由の一つにマネタイズが難しいことが挙げられます。PoliPoliはどのように収益を得ているのでしょうか。

 

政策を投稿する国会議員の方々から掲載料を頂いています。就活サイトや転職サイトのように、情報を載せたい人が手数料をプラットフォームに払う仕組みです。そのため、ユーザーは無料で登録できます。ただ、いまの時点で収益はあまり考えずにやっています。まずはサービスとしての質を上げる時期だと思っていますし、プラットフォームとして意義があるものになればユーザーも増えて、収益を上げることができるからです。例えば全国の市区町村議員は約3万人います。そのうちの1万人の人々が使うようになったら、ビジネスとして成立しますよね。さらに多く議員が使うようになったら、業務効率化ツールや有権者がプラットフォーム上で献金ができるサービス機能のニーズが高まると思います。もしその機能を実装したら、利用料や手数料でさらなる収益化も見込むことがでる。だからこそ、いまは国会議員や有権者が信頼できるサービスを作ることを大切にしています。

 

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プロフィール

伊藤和真

起業家。1998年生まれ。慶應義塾大学商学部在学中。18歳で俳句アプリ『俳句てふてふ』を開発したのち、毎日新聞社に売却。2018年2月に株式会社Poli Poliを起業。同社が開発した「Poli Poli」は、ユーザーが直接政治家に政策提言や、政策評価を行えるプラットフォームとして注目されている。

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