カルチャーから見る、韓国社会の素顔 第10回

なぜ、ドラマ『SKYキャッスル』が韓国を知るうえで重要と言われるのか?

――「上流階級の妻たち」がモンスター化する、その理由

伊東順子

ドラマ『Mine』のその後、財閥モノからフェミニズムへ?

 先日、女性雑誌からインタビューを受けた。

 「オススメのドラマをいくつか教えて下さい」

 以前、韓国文学について同じ質問をされた時も相当悩んだが、ドラマとなればさらに大変だ。私は1990年初頭から韓国ドラマを見ているので、約30年分、ふええええーー。

 困っていたら、質問が変わった。

 「では、今、見ているドラマは何でしょう?」

 「はい、それなら『Mine』です。最新作で韓国でも同時放映中の、いわゆる財閥モノですが、過去の作品とは全く違う展開になってきて……」

 その雑誌はファッション系だったので、まずはドラマの魅力の一つとして、「ファッション」の話になった。『Mine』の登場人物の衣装が本当に素敵で、見ていると幸せな気分になる。コロナ自粛でおしゃれして外出する機会がなくなったせいか、美しくしている女性を見るだけでワクワクするのだ。

 「結局、私たちって、ふだん街に出ても女性しか見ないんですよね。オジサンたちが何を着ているかなんて気にもならない」

 同世代の女性編集者は「まさに、まさに」と言いながら、「それにしても……」と続けた。

 「韓国の人は、なぜあんなにファッショナブルなのでしょうね?」 

 韓国人の美意識の高さについては、歴史的・文化的な考察が可能である。これまで「整形大国」みたいなネガティブな語られ方ばかりされてきたが、そんなのは長い歴史の一断面にすぎず、実に些末なことである。

 「美容整形など化粧の延長ですよ」みたいな言い方もされるけど、韓国人の場合はそれとも少し違う気がする。化粧というよりは、それ以前。つまり顔を綺麗に洗い、髪をきちんととかすこと。身体を手入れすることの一貫、というふうに思えてくる。

 韓国人の美意識については稿を改めたいが、一つだけ。韓国で暮らし始めた頃から、人々がどれほど綺麗好きで、身だしなみに気をつけているか、その奥深さを感じていた。しばらくして、その背景には儒教的な思想があるのに気づき、そして思ったのだ。

 この国の人たちが経済力をつけたら、すごいことになる。

 そんな90年代初頭の予感はみごとに当たり、ソウルはファッションとデザインの街となった。Kpopや韓国ドラマのスターたちは今や、アジアのファッションリーダー的な存在となり、日本の若い女性なども多くが「#韓国っぽ」(韓国っぽさから派生した言葉。インスタなどのハッシュタグに使われる)を意識している。

 そんな「美しい韓国」の、なかでも大人の女性の美しさを堪能できるのが、ドラマ『Mine』である。それに加えドラマの内容も、これまでの財閥モノとはかなり趣が異なり、シスターフッドや性的マイノリティ問題などをからめた、エッジの効いた展開になっている。

 強くも、美しい、韓国女性たち。

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カルチャーから見る、韓国社会の素顔

「愛の不時着」「梨泰院クラス」「パラサイト」「82年生まれ、キム・ジヨン」など、多くの韓国カルチャーが人気を博している。ドラマ、映画、文学など、様々なカルチャーから見た、韓国のリアルな今を考察する。

プロフィール

伊東順子

ライター。編集・翻訳業。愛知県生まれ。1990年に渡韓。ソウルで企画・翻訳オフィスを運営。2017年に同人雑誌『中くらいの友だち――韓くに手帖』」(皓星社)を創刊。著書に『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)等。チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房、斎藤真理子訳)の解説を担当。

 
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なぜ、ドラマ『SKYキャッスル』が韓国を知るうえで重要と言われるのか?