宇都宮直子 スケートを語る 第4回

トルソワ前編

宇都宮直子
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 アレクサンドラ・トルソワ、2004 年生まれのロシア人選手である。

 トルソワは、4回転時代の申し子だ。4回転ルッツから、連続ジャンプを跳ぶ。男子でも難しい、極めて高難度の技だ。

 アリョーナ・コストルナヤ(2003 年生まれ)、アンナ・シェルバコワ(2004 年生まれ)と一緒に「3人娘」と呼ばれていた。恐れられていた、と言ってもいいだろう。

 シニアデビューとなった昨シーズン、彼女たちは勝ち続けた。揃って出場したグランプリファイナル(イタリア、トリノ)では、表彰台を独占する。それで「当然」のような雰囲気が、その頃にはあった。

 当時連載していた月刊誌「中央公論」に、私はこう書いている。

「この3人は3月にカナダで行われる世界選手権で、表彰台を独占するかもしれない。そうなっても、だれも驚かないだろう」

 私はいつだって、日本人選手を応援している。男子にも女子にも、勝ってほしいと願っている。

 だけど、昨シーズンのトルソワらには「かなわない」と考えた。彼女たちは、それほど飛び抜けた存在だったのである。

 カナダでの世界選手権の中止を、トルソワはこう表現している。「しばらくの間、人生が止まった」。

 新型コロナウイルスは、人の人生も容赦なく書き換えていく。ショックの大きさは想像に難くない。

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宇都宮直子 スケートを語る

ノンフィクション作家、エッセイストの宇都宮直子が、フィギュアスケートにまつわる様々な問題を取材する。

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プロフィール

宇都宮直子

ノンフィクション作家、エッセイスト。医療、人物、教育、スポーツ、ペットと人間の関わりなど、幅広いジャンルで活動。フィギュアスケートの取材・執筆は20年以上におよび、スポーツ誌、文芸誌などでルポルタージュ、エッセイを発表している。著書に『人間らしい死を迎えるために』『ペットと日本人』『別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った』『羽生結弦が生まれるまで 日本男子フィギュアスケート挑戦の歴史』『スケートは人生だ!』ほか多数。2020年1月に『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』を、また4月には『三國連太郎、彷徨う魂へ』が刊行されている。

 

 
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