ホシノ ついに『ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説』の第1位の発表でございます。
やく ようやくここまで。
ホシノ では、やくさん、高らかに。
やく はい。
ホシノ ドロロロ~(口ドラム)ジャガジャン!
やく 栄光の第1位は……ダダ戦。
古谷 ほう、ダダですか。
ホシノ ……えっと……なんとも微妙な空気が漂っておりますけども、ええっと、本当にダダ?
やく 失礼な(笑)。いや、わかっています。今まさに、この連載を読んでくださっているほとんどの方が一斉に「なぜ、ダダ?」と訝しがっておられるのは。
ホシノ 人気のバルタン星人との戦い、狂暴なレッドキングとの戦い、地球を賭けた心理戦にまで発展したメフィラス星人との戦いを差し置いて、1位がダダ戦と発表されても、そこはやっぱり?マークが飛び交うのは仕方ないわけで。それでも……。
やく (ホシノの発言を遮るようにして)しかも!
古谷 しかも?
やく ダダは弱い。これはあくまでも私の勝手な解釈になりますが、ダダはウルトラ怪獣の中で一番弱い、最弱だと思います。
古谷 ワッハハハ、確かに、そうかもしれません。
やく なにせダダは等身大スケールの際、人間であるムラマツ隊長のタックルで吹き飛ばされているんですよ。いくら相手が格闘術に長け、鍛えているであろうムラマツ隊長だとしても、そんな弱々しい星人、広大な宇宙の中でダダしかおりません。
古谷 ワッハハハ。
ホシノ それでも栄光の第1位にダダ戦をランクインさせたエビデンスを教えていただければ。
やく それはウルトラマンとの戦いを振り返ってから――。
ホシノ 了解しました。では、注目のダダ戦を――。
古谷 振り返る前に、ちょっといいですか。
ホシノ はいはい、どうぞ、どうぞ。
古谷 これまで語ってこなかったのですが……。
やく ん? 語ってこなかった、それは非常に興味深い。
古谷 ダダなんですがね、実はモデルがいたんです。
ホシノ えっ!
やく やっぱり。あの特徴的な容貌、私もかねがねダダにはモデルがいるんだろうなと思っておりました。
古谷 ダダのマスクのモデル、ウルトラマンの美術を担当されていた、成田亨さんのお弟子さんなんですよ。
やく まさか女性の?
古谷 そうです。今もまだご健在で、ハワイに住んでいらっしゃいます。成田さんは彼女の髪型や口元をイメージしてダダのマスクを作り上げたんですよね。その方、とても魅力的ながんばり屋さんの女性でしてね。女性にはキツい仕事? 例えば重たい砂の塊をスタジオに運び込み、真面目にコツコツと怪獣が歩き回る山の斜面や川を作っていました。それこそ泥だらけになりながら。
ホシノ ええ。
古谷 僕にもよくしてくれました。心根の優しい人でしたね。もしかしたら、何かの拍子で付き合うことになったかもしれないなあ(笑)。
やく・ホシノ えっ!
古谷 いやいや、淡い青春の思い出のひとつですよ(笑)。まあ、そういう意味でもダダには特別な思い入れがありまして。だから、やくさんが1位をダダ戦と発表したときは、違った意味でドキッとしました(笑)。
ホシノ なんという秘話!
古谷 いやいや、照れ臭いですし、さっ、ダダ戦を振り返りましょう。
プロフィール
古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。
やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。