ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第11回

ウルトラマンの技が一番美しくキレッキレだった戦い

古谷敏×やくみつる

不滅の10大決戦 第1位

三面怪人 ダダ

身長/1.9~40m 体重/70kg~7000t

 

【バトルプレイバック】

 邪魔なウルトラマンを倒せ、とダダ上司から指令を受けたダダ271号。研究所を飛び出し、巨大化。そのダダ目がけて飛行するウルトラマンに対し、ダダも迎え撃つため飛び上がり、両者探り合うような微妙な空中接触…後、ダダは飛行しながら消えた。ウルトラマンは着地して行方を探すが、神出鬼没のダダは背後に現れる。

 気配に気づいたウルトラマン、走り寄ってスライディングしながらの足払いで倒し、マウント攻撃を仕掛けるも、ダダも必死の抵抗でくんずほぐれつ。その乱闘状態の隙を突き、ウルトラマンが頭突き、そして左右のパンチの雨あられ。何もできず、よろけながら逃げるようして再び消えるダダ。直後、またしてもウルトラマンの背後に現われたのだが、驚くべきことに、この瞬間、ダダの顔が変わり、ダダBとなる。

これが噂のダダB。ウルトラマンの隙を狙い、背後から襲う。意外とダダBのファンが多く、フィギュア化希望の声も熱い

 ダダBはムンズッとウルトラマンをフルネルソンに捕らえるが、ドラゴン・スープレックス…を放つ間もなく、右手をつかまれ見事な一本背負いを食らう。なにクソ、と気迫を見せて果敢にウルトラマンに立ち向かうダダBだったが、今度は合気道の要領で投げ飛ばされる。それにしても、ダダ、弱すぎ。対するウルトラマン、次に放ったのは華麗なフライング・ヘッドシザーズだ! あの白覆面の魔王ザ・デストロイヤーが1960年代前半、ロサンゼルスマットで暴れ回っていた時代に頻繁に披露していた必殺の空中技である。

ウルトラマンの華麗なるフライング・ヘッドシザーズがダダBに炸裂。受け切ったスーツアクターの鈴木邦夫氏もお見事!

 さらにウルトラマンは怒涛のラッシュ。チョップ、パンチの乱れ打ちから、ダダの右わき腹に肩を入れて持ち上げると、2回転して投げ捨てるという大技を繰り出した。ダメージが大きい、ダダ。弱すぎる、ダダ。こりゃあかん、とでもいうようにまたもや姿を消すが、ここで逃げ出せば上司に顔向けできないと思ったのか、なんとか勇気を振り絞り、懲りずにウルトラマンの前に。その顔は再びダダAに変化していた。だが、その変化が強烈な技や強さに繋がっているかといえばそうではなく、その変化した顔に、いきなりウルトラマンのスぺシウム光線を眉間に食らい、無残にも顔面を黒焦げにされてしまった。そのまま反撃することもなく、またも姿を消す、ダダ。

ウルトラマンのスぺシウム光線を眉間に受けて、痛がりのけぞるダダ。ここまでされても上司に歯向かえず自らの職務をまっとうしようとするダダの後ろ姿には、戦後の日本を支えてきたモーレツサラリーマンたちと同じような悲哀が滲んでいた

 消えたダダは再び研究所内に姿を現わし、上司に「ウルトラマンは強い」と悲痛に報告。それでも上司は人間標本の指令を遂行せよといわんばかりに突き放す。本当なら、この時点で宇宙に逃げ出したかったであろうダダだったが、上司の命令に逆らわず、最後の最後まで己の仕事に忠実であろうとする。そう、ダダは人間を標本にするべく地球にやってきたのだ。その使命を果たすため、屋上に逃げたムラマツ隊長と研究所を訪ねてきた女性をミクロ化して標本にするため追いかける。

 その気迫の現われ(?)か、隊長の前に立ちはだかった時の顔は3パターン目のダダCだ(でも、黄色の小さな目で一番恐くない)。しかし、ムラマツ隊長のタックルであっけなく倒される。倒れながらも逃げる女性の足をつかむダダ。この時の顔は黒コゲのA。女性を助けようと隊長、ダダにキック! するとAだった顔がBになり、2人を追いかけようと振り返った時にはCになっていた。この早変わり、まさに三面怪人の面目躍如である。

 その後、はしごで屋上に登りきろうとする2人の頭上にAの顔でダダが立ちはだかる。そのダダの足を隊長が水平チョップで払い、ダダは屋上から転落。これでやっつけた…と思いきや、背後から再び銃を抱えて現れ、2人を屋上の端に追い詰め、足を踏み外した2人は屋上から転落! それをウルトラマンが発見し、間一髪のところでキャッチして救出に成功した。こうなると、逆に追いつめられる、ダダ。ウルトラマンにミクロ化機で応戦するも効かず。ウルトラマンが小さくなって屋上に現れると、逆にダダは巨大化し、空に飛び立ち逃走を図る。再度巨大化し、ダダを追いかけるウルトラマン。消えて逃げるダダに透視光線を両目から照射し、ダダの姿をキャッチすると、今度こそのスぺシウム光線を放ち、ダダは火花を散らして空中爆破したのだった。

次ページ   ウルトラマンは子供たちと一緒に戦っていた
1 2 3
 第10回
番外編  

プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル
プラスをSNSでも
Twitter, Youtube

ウルトラマンの技が一番美しくキレッキレだった戦い