ガザの声を聴け! 第31回

ガザのクリスマス

清田明宏
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ガザについた12月24日はクリスマスイブ。その夜、ガザの教会でクリスマスイブのミサがあったので参加した。

ガザにもキリスト教徒がいる。その数は約1000人と言われ、教会も3つある。大多数はギリシャ正教等の東方正教会の信徒だが、現地でラテン系(カトリック、あるいは西方教会)と言われるローマカトリック教会の信徒もいる。キリスト教徒の数は10年前には現在の倍だったが、戦争の影響でどんどん減っているらしい。

その中で、クリスマスイブのミサが行われたのは、ローマカトリック系の教会だ。2016年に改築され、とても綺麗な教会だ。クリスマスイブのミサと言えば、イエスが生まれたとされる、ヨルダン川西岸のベツレヘムの聖誕教会が有名だが、クリスマスにせっかく来たので、友人と一緒にガザの教会に出かけた。私はキリスト教徒ではなく、宗教とは基本的に無関係な生活をする日本人だ。ただ、イスラエルによる封鎖で崩壊的とも言える状況にあるガザ、その地で暮らすキリスト教徒と一緒にイエスの生誕を祝い、少しでも連帯感を示せればと思い、出かけた。

ミサは午後7時から。教会についてみると、物々しい警護であった。トランプ大統領の宣言のためなのか、それとも過激派を危惧してなのかわからないが、多くの警官が教会の周りにおり、緊張した。そして教会の敷地内には10人を超える多くのメディア関係者がいた。とても騒々しい。ただ、教会の中に入ると厳粛な静寂があり、その差に安堵した。

ミサの初めは空席が多かったが、次第に教会内は一杯になった。200人はいたであろうか。我々の席の前には小さな娘さん三人を連れたとても若い家族が座っていた。娘さんたちはまだ小さく、頭にサンタの赤い帽子をかぶりとても可愛い。

ミサはとても厳粛な雰囲気だった。聖歌とともに祈りを捧げる。家族連れが多く、小さな子どもたちも多い。じっとできず、動き回り声を出す子どもたち。その子どもたちに、静かに! と注意する修道女(シスター)。厳粛ではあるが、とても暖かいミサでもあった。

ミサの厳粛さと静寂さ、そして祈りを捧げる人々の姿、彼らの思いが、教会の外に、そして世界に広がればと思わずにいられなかった。そして、この教会での永遠の平和とも思える静けさが、一日も早く本当の平和となり、ガザの人々がその恩恵を受ける日が訪れるよう、私も祈った。

ミサが終わって周りの方に話を伺った。UNRWA「ウンルワ」の同僚の家族にも偶然会った。彼らは東方正教会の信徒だった。今日のミサの教会は宗派が違うのでは、と聞くと、ガザではキリスト教徒は皆団結しており、クリスマスのような大事な日には宗派に関係なく、一緒になり祈りを捧げるのだ、と当たり前のように答えた。

中学生ぐらいの女の子二人連れとその母親に話しかけられた。どこから来たのかと聞かれたので、日本と答えると、ガザの状態をどう思うか、今日何を思ったか、と聞かれた。「ガザはとても大変だが、今日はこの教会で、とても厳粛で暖かい雰囲気の中、ガザの方とイエスの生誕を祝えたのは本当に光栄で特別だ」と答えると、微笑んでくださった。色々話をしてみると、この家族は、実はイスラム教徒だった。それがわかった時、思わず「なぜ今日ここに来たのですか?」と聞いた。「この子たちに色々なものを見せたい、色々なことを考えてほしいから」だと、母親が答えてくれた。それを聞いている二人の娘さんも嬉しそうに笑っていた。私も思わず微笑む。余談だが、その後、娘さん二人に私のFacebookのアドレスを聞かれた。お互いが繋がっていくようでとても嬉しかった。

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ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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ガザのクリスマス

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。