「それから」の大阪 第2回

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める

スズキナオ

地上252メートルの展望台から

コンテナとトラックばかりが支配する夢洲を離れて数分で再び咲洲のコスモスクエア駅前へ戻ってきた。駅からは高さ256メートルの「さきしまコスモタワー」の威容が見え、あの展望台からも夢洲が見えるのではないかと思い、立ち寄ってみる。

咲洲に高くそびえる「さきしまコスモタワー」(2020年8月撮影)

 

 

「さきしまコスモタワー」はかつて「大阪ワールドトレードセンタービルディング」という名のついていたビルで、前述の通り、現在は大阪府の咲洲庁舎として大阪府の一部機関に利用されている。55階にある展望台は地上252メートルの位置にあり、日本でも有数の高さを誇っている。利用料金の800円を払って上ってみると、私の他に利用客の姿はなかった。急に降り出した雨によって残念ながら窓の外の景色は完璧なものではなかったが、それでも自分の歩いた夢洲がしっかりと一望できた。夢洲の全体像をとらえるには、ここからの眺めが一番かもしれない。

今はまだ万博会場になることが信じられないような夢洲(2020年8月撮影)

展望台内には簡単な食べ物と飲み物を出すスタンドがあり、そこで生ビールを購入しつつスタッフの方に話を聞いたところ、万博開催予定地の現在の姿を撮影しにテレビの撮影班が来たり、万博関連企業の人々が視察に訪れたりもするという。「この展望台をもっとたくさんの人に知ってもらいたいんです!平日はのんびりできるし、夜景もすごく綺麗なんですよ!」というスタッフの方は、心からこの展望台に誇りを持っているようだった。大阪の負の遺産の象徴のようにも言われる「さきしまコスモタワー」だが、ここで働く人にとっては愛着のある場なのだ、と当たり前のことに気づく。ここで撮影したという虹の写真を見せてくれた。

展望台から撮影したという虹(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間ほど、展望台からの風景を眺めつつ酒を飲んだ。今はまだ万博会場になるなんて冗談のようにしか感じられない夢洲の姿。この景色が変わっていくのを、これから何度もこの場所に来て眺めることにしてみようと思う。スタッフの方に「年間パスポートは無いんですか?」と聞いてみたところ、「絶対あった方がいいですよね!上の者に言っておきます!」と笑顔で応じてくれた。いつかそれが実現することを願いながら、ほろ酔い気分で地上へ向かうエレベーターに乗り込んだ。

(つづく)

 

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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