「それから」の大阪 第9回

中止と再開を繰り返す四天王寺の縁日

スズキナオ

コロナ禍の縁日風景

2020年4月になると、四天王寺は感染拡大防止のために境内のお堂をすべて閉鎖。お寺の歴史としてもかつてないことだとしてニュースにもなった。その後、同年6月からは閉鎖が解かれて拝観が再開されたものの、毎月の縁日を始めとした多数の人が集まる行事はずっと中止されたままだった。例年であれば1週間に渡って境内に露店が出て賑わう9月のお彼岸になるとようやく、日々報告される感染者数が落ち着いてきたように見えたのを受け、縁日が再開されることになった。

久々に縁日が開かれると聞き、私もその様子を見に行ってみたのだが、長い休止期間を経て目の前に現れた境内の活気を眺めると感慨深いものがあった。それでも、コロナ禍以前に見てきた縁日の賑わいからすると露店の数も人出もだいぶ少なく見えた。「やっと再開やな」「いやまだ今月は様子見やな。人もおらへん。3分の1や」と、露天商と客との会話が聞こえてくる(その反面、久々の再開で売れに売れていると話す古道具店主もいた)。

陶器類をたくさん並べて売る店(2020年9月撮影)

地面に直接ダンボール箱を置くスタイルの店も(2020年9月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまで縁日の日には無料で開放され上階まで登れた五重塔も“密”を避けて閉鎖されているし、「お経や真言を唱える際は小声でお願いします」という注意書きが目に入るし、境内を歩く人々は当然みなマスクをしているし、やはり様々な部分がこれまでとは変わってしまったと感じる。

翌月、2020年10月の縁日にも足を運んでみたが、晴天で過ごしやすい気候だったにもかかわらず、やはり人出は完全には戻っていないようだった。

古着を山のように積み上げて売る店(2020年10月撮影)

多種多様な店が並ぶのがこの縁日の面白さだ(2020年10月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り際、私は勇気を出してある屋台の店主に声をかけた。事情があってその屋台のことは詳しく書けないのだが、いつも行列ができるような、四天王寺の縁日の名物店である。様々な露店が建ち並ぶ中でも老舗で、25年ほどこの場所で商売をしているという。私も以前からその店が好きで、四天王寺の縁日に来るときは毎回そこに立ち寄れるのを楽しみにしていた。今、コロナ禍で四天王寺の屋台がどんな影響を受けているのか、できれば話を聞かせてもらえないかと思ったのだ。

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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