「それから」の大阪 第9回

中止と再開を繰り返す四天王寺の縁日

スズキナオ

大阪市天王寺区に「四天王寺」というお寺がある。日本書紀には593年創建と記されており、日本最古の仏教寺院とも言われている。物部守屋と蘇我馬子の合戦の際に蘇我氏側についた聖徳太子が勝利を祈願して建立したとされ、大阪市の南東部にある繁華なエリア「天王寺」の地名の由来にもなっている。

第二次世界大戦末期、1945年3月の大阪大空襲で境内の大部分が全焼する被害を受けたが、その後長い年月をかけて復興し、現在では創建当時の伽藍が忠実に再現されている。四天王寺の敷地は約11万平米(甲子園球場の3倍だとか)と広大。創建以来幾度となく損壊しつつもその度に再建されてきた五重塔、寺の本尊である救世観音を祀る金堂、十一面観音と阿弥陀如来を祀る講堂が一直線に並ぶ様式は「四天王寺式伽藍」として有名だ。

と、仏教寺院としての歴史的な価値も大きい四天王寺なのだが、私が初めてこの寺を知ったのは「縁日が賑やかで楽しいお寺」としてなのだった。大阪に越してきて間もない頃、大阪生まれの知人に「四天王寺の縁日に行った方がいい! 絶対に気に入ると思う」と熱く推薦されて足を運んだ。

雑多な活気が渦巻き、鐘の音がゴーンと響く

四天王寺では、弘法大師の月命日である毎月21日を「大師会」、聖徳太子の月命日である毎月22日を「太子会」としており、この2日間は境内にたくさんの露店が出る。特に21日には骨董やアンティーク雑貨、古着などを売る露店が多く集まり、いわゆる「蚤の市」のような場が生まれる。初めて行った時はその賑わいと個性的な露店の数々に衝撃を受けた。いかにも高級そうな古美術品を陳列した店もあれば、おびただしい数のこけしを売る店もあり、かと思えば自宅の不用品かと思われるものをレジャーシートの上にポツリポツリと並べただけの、のんびりした店もある。食べ物を売る屋台もたくさんあって、そこで買ったものをみんな石段に腰かけたりして食べている。雑多な活気が渦巻く中で鐘の音がゴーンと鳴り響き、場のエネルギーに圧倒されて頭がクラクラした。

毎月21日、22日は縁日で賑わう四天王寺(2020年10月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからたびたび足を運んでは、露店を眺めながら屋台で買ったイカ焼きをほお張ったりして楽しんでいたが、その四天王寺の縁日も新型コロナウイルスの流行に大きな影響を受けた。

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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