本書『貧困クライシス』では、第一章で「若者の貧困」、第二章で「中年の貧困」、第三章で「女性の貧困」、第四章で「老人の貧困」を取り上げ、貧困が誰でもが陥る危機であることを示している。本書を手にしたらご自身のカテゴリにあてはまる章を読んでみてほしい。そこに自らの明日の姿が見つかるかもしれない。
とりわけ、現代の貧困が普通の人の危機であることをよく示しているのは、第二章「中年の貧困」である。そこに登場するのは、糖尿病にかかった大手宅配会社配送員、契約社員から正社員になれない編集者、リストラされた元大手都市銀行員、介護離職した公務員らだ。
「いずれも30代後半から50代の働き盛り。病気にならなければ、正社員になれれば、リストラされなければ、親の介護がなければ、ごく普通の生活をしていたはずの人たちです。何か一つ歯車が狂っただけで、貧困の落とし穴にはまってしまうのです」
藤田氏は次のように警告する。
「高度成長やバブル時代を経験した世代ほど、右肩上がりのマインドから抜け切れない。でも、景気が好転する材料はありません。人口は増えないし、GDPも上がらない。日本経済はこれから右肩下がりが続きます。この変化に適応できない人は自らが貧困状態にあることに気づかないまま、中間層に踏みとどまっているつもりで、実際は下流、下の上あたりに落ちているのが現実です」
だから、自分のことを中流だと思っている人なら誰でも、貧困に陥ったときの対策をしておいたほうがよい。
「他人事ではなく自らのこととして考えてほしい。私がこうした活動をしているのも、自分と、自分の子どもたちが安心して生活できる社会であってほしいからです。でも、なかなか伝わりませんね。いまだ多くの人にとって貧困は他人事のように思われています」
プロフィール
ソーシャルワーカー。1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。社会福祉士。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。聖学院大学客員准教授(公的扶助論)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。著書に『下流老人』『続・下流老人』(共に朝日新聞出版)、『貧困世代』(講談社)、『ひとりも殺させない』(堀之内出版)など。