著者インタビュー

揺れる日本、正確な予測で 被害を最小限に食い止めたい!

『地震予測は進化する!』著者インタビュー
村井俊治

 独自の地震予測法を開発し、2014年1月以降に起きた震度5以上の地震をことごとく予測し、各メディアで話題を呼んだ村井俊治さん(東京大学名誉教授・地震科学探査機構[JESEA]取締役会長)の著書『地震は必ず予測できる!』(2015年)の第二弾『地震予測は進化する!』が集英社新書から刊行されました。
 村井さんはもともと測量工学の学者で地震学に関しては「門外漢」でしたが、GPSデータを使って地表の動きを解析し、地震発生の危険度を予測するという画期的な方法を開発。このアプローチで得た日本全国の情報を有料メールマガジン「週刊MEGA地震予測」で発信しています。この予測サービスを始めた2013年当時は、会員数が数百人でスタッフの給料にも事欠いたのが、いまや約5万人もの会員を獲得。村井さんも国内だけでなく、世界各国から講演の依頼があり、今年で御年80歳という年齢にもかかわらず精力的に活動を続けています。現状に満足することなく、常に新しいアプローチの可能性を模索する村井さんに、お話を伺いました。

聞き手・構成=宮内千和子/撮影=山口真由子


「門外漢」「異端児」「孤高の人」と言われ続けて17年

──村井先生が東大の研究職を退官されて、ご専門の測量学とはまったく畑違いの地震予測の研究に関わられて17年とか。前著には当時のご苦労が語られていますが、いまや「週刊MEGA地震予測」の有料会員数はおよそ5万人。「いつどこで地震が起きるか」の指針になっていますね。
 おかげさまでたくさんの方々に私どもの地震予測のメカニズムのご理解をいただいて、順調に伸びてきましたが、認知度としてはまだまだで、当面10万人の会員数を目指したいと思っています。
 私が先輩の荒木春視(はるみ)さん(航空測量学)から、人工衛星で測定した地表の動きのデータを観測して、一緒に地震の予測をしてみないかという誘いを受けたのは2002年のことです。荒木さんは私より8歳年上ですから、私も年寄りですが、彼はもっと年を取っている。そのおじいさんが奇妙なことをやっていると、みんなから白い目で見られるというか、物笑いの種になっていたのです。もちろん荒木さんの研究にだれも乗ってくる人はいない。でも私は荒木さんの説に新しい可能性を感じて、第二の人生を地震予測にかけてみようと思った。それが私の出発点です。
 週刊誌には必ず「異端児」とか「門外漢」「孤高の人」とか書かれましたし、地震学の専門家からも変人扱いされ続けました。でも、観測と研究を続けるうちに我々の方法で地震の前兆現象を捉えることができると確信するに至ったのです。私が今でも深い後悔をしているのは、あの3・11の東日本大震災が起きる1カ月ほど前に、あきらかにその不気味な前兆に気づいていたにもかかわらず、その情報を発信できなかったことです。発信ができなかったのは、一民間人が世間をパニックに陥れるような「予知」をお役所から禁じられたからですが、あの犠牲の大きさを目の当たりにして大きなショックを受けました。どんな手段を講じてでも情報を世に出すべきだった。それが地震科学探査機構(JESEA)を立ち上げた一番大きな動機です。
──村井先生の理論が確実に成果を出して、震度5以上の地震の前兆を捉え、その情報をメルマガやアプリで「要警戒」「要注意」「要注視」と警戒レベルをわかりやすく人々に届けています。それでもなお地震学の専門家からは異端児扱いなのですか。
 この事務所に気象庁と国土地理院と文科省地震調査研究推進本部の方たち7人が来訪しました。1人は課長クラスでしたが、6人は若い方たちです。その方々が最初に、「どういうモデルを使っていますか」と質問してきました。地震学というのは理学系ですから、方程式が立つようなモデルを常に求めているわけです。だから私にそう聞いてきたわけです。でも地震予測はモデルや理論じゃない。そこを彼らはわかっていないなと思いました。
 普通地震は浅くて地下10キロ、多いのは30キロから50キロくらい。うんと深いと、小笠原で地下680キロの地震もありました。そんな地下を観測する手段なんて、今のところありません。世界中どこにもない。地下の構造だって、マグマがあることぐらいしかわからない。断層といったって、数百メートルぐらいの断層しかわからないんです。よく地震学者が我々は地下200メートルにピアノ線を張って測ったと言うけど、それはほんの皮の表面です。ほとんど実態がわからない地下で、物理方程式、力学の方程式が成り立つわけがないし、物理モデルをつくるなんて無理なことなんですよ。

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プロフィール

村井俊治

むらい・しゅんじ 1939年生まれ。東京大学名誉教授(測量工学)。地震科学探査機構(JESEA)取締役会長。2000年の定年退官まで、東京大学生産技術研究所教授を務める。著書に『東日本大震災の教訓 津波から助かった人の話』『地震は必ず予測できる!』等。

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