腹から金玉 39歳、目が覚めたらオストメイト ep.09

2度目の救急車、2度目の入院

2024年6月9日(日)の記録
かわむらまみ

ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。

またしても皆さまの血税を使わせていただきました!! すみません!!!(意訳:また救急車を呼びました)

一昨日7日の昼過ぎから、腹痛と吐き気の不穏なコラボ。寝たらまた治るかな〜と昼寝をするも、お腹が痛くて目が覚めてしまう始末。23時頃まで耐えたものの、痛すぎて3回吐いたあたりで、これは無理かも……とギブアップして救急車を呼んだ次第です。

電話が119に繋がると、開口一番「火事ですか? 救急ですか?」と尋ねられるのですが、さて、ご存じですか? 「救急です」と答えた後に聞かれるのは「どうしましたか?」ではないことを。

正解は「救急車が向かいます。向かう住所を教えてください」。

いや、このオペレーション、すごくない!? 救急車を呼ぶ人って、最悪の場合、電話の途中で意識を失ってしまうこともあると思うんです。だからこそ、真っ先に確認すべきは住所! 何がなんでも人命を救う! という消防の方や救急救命士さんの強い意志を感じる。症状や名前の確認なんて二の次です。2回呼んで2回ともそうだったので、これはもう、そういうルールになっているんだと思う。

そしてこのやり取り、呼ぶ側からすると、すごく心強いんですよね……。一応こちらも、腹痛なんかで呼んでいいのかなぁ、と不安や申し訳なさを抱きながら、逡巡した末にスマホを手に取り、1、1、9と押しているわけですよ。だから、ああよかった、助けに来てくれるんだ……って本当に心から安心する。「救急車が向かいます」のひと言だけで、もう号泣。スマホの画面も心なしかいつもより眩しい。そんな素晴らしい救急オペレーション、もっと多くの方に知っていただきたいものです。あと、タクシー代わりに救急車を呼ぶ不届き者は絶滅してくれ。

で、なんだっけ。腹痛と嘔吐で救急車を呼んだ話か。どうやら「腸閉塞(イレウス)」という、腸が詰まったりねじれたりする病気だったみたいです。腸閉塞は、わたしのようなストーマを造設した人に多く見られる症状らしい。ひどいと腸壁が壊死したり、腸が破裂したりする場合もあるそうですが、今回はそこまでじゃなさそうという当直医師の判断で、痛み止めの点滴で朝まで乗り越えることになりました。なんか、詰まり解消の応急処置として、ストーマの「口」の部分にぐいぐいと指を突っ込まれた。腸って、指、入れていいんだ……。ひとまず、この腹痛が、がんの再発や転移によるものじゃなくてよかったです。

それにしても「えーん! 痛いよ〜!」と大の大人が喚き回るほどの腹痛……をたった10分ほどで「無」にした痛み止め点滴、もはや、すごいを通り越してちょっと怖い。点滴が効いているかどうか確認するための看護師さんの声がけも「楽になってきましたか?」じゃなくて、

「楽しくなってきましたか?」
「なんか幸せになってきませんか?」

だったもんね。何かに入信させられている?

そんなこんなで朝になり、痛み止めの点滴だけでなぜかお腹の調子もよくなったため、手術はせずに絶食生活で様子見となりました。とりあえず、1週間ほど入院とのこと。1ヶ月ぶり2度目の「3食お茶だけダイエット」、今回もがんばりたいと思います。搬送される段階で入院を見越して、涙と吐瀉物でよれよれになりながらもスマホの充電器やらドライシャンプーやらQoo10のメガ割で買ったばかりの美容液やらを家から握りしめてきた自分、だてに緊急入院慣れしていなくて強い。退院したら、いっそ防災リュックならぬ入院リュックでも作っておこうかな。

ちなみに入院先は、前回と同じ病院、同じ病棟、同じ部屋です。なんだったらベッドの位置まで一緒。搬送時に「○○病院に連れて行ってもらえますか?」とお願いしたのが功を奏した形です。図々しい患者だな。病室はナースステーションのすぐ横なので「あれ? 戻ってきたの〜?」「そうなんです〜、てか○○さん髪切りましたね!」なんて、顔馴染みの看護師さんたちと仲良くやらせていただいております。平和。

あと、7日に投与された謎の幸せ薬、やっぱりそこそこ強力な鎮静剤だったんじゃないかなぁ。投与から2日経った6月9日の12時現在も、いまだに吐き気とめまいが残っていて、実際、何回も吐いているし。具合悪〜。でも痛いよりまし〜。というか点滴で思い出したのですが、搬送された夜にせん妄を起こして「痛い! 苦しい! なんとかしなければ! そうだ歌おう、歌えばいいんだ」と訳のわからない思考に至ったことをぼんやりと覚えていて……。もしこれが事実であれば本当に最悪なのですが、なんか、夜中に大声で歌っていたような気がするんですよね、わたし……。入院しているのは個室ではありません、大部屋です。迷惑にもほどがある。頼むから夢であってほしい。同室のおばあちゃん方、その節は大変申し訳ございませんでした。ご存知ですか、あの曲がVaundyの『怪獣の花唄』です。サビばっかり歌ってすみません、サビしか知らないんです。という話じゃないですよね。存じております。心から申し訳ない、いや本当に。

(毎週金曜更新♡次回は12月6日公開)

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腹から金玉 39歳、目が覚めたらオストメイト

ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。

プロフィール

かわむらまみ

ライター

1985年生、都内在住。2024年5月にステージⅢcの大腸がん(S状結腸がん)が判明し、現在は標準治療にて抗がん剤治療中。また、一時的ストーマを有するオストメイトとして生活している。日本酒と寿司とマクドナルドのポテトが好き。早くこのあたりに著書を書き連ねたい。

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