平成消しずみクラブ 第14回

病んで候う

大竹まこと
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 思えば、私の腰痛は急激であった。

 痛みは横になっている時だけは収まるのだが、座っている時も立っている時も、ジクジクと左腰に痛みが襲った。もちろん歩くこともできない。

 最終的に、大病院での手術を受ける羽目になるのだが、それ以前は親切な友人の教えに従って、針や気功、スポーツマッサージなどあらゆるものを試した。しかし、どれも効果がなかった。

 痛い腰を支えながら、ようやくの思いでたどり着いた古いビルの二階にある気功師のところでは、階段ですれ違った妙齢の女性に「効きますか」と尋ねたら、真剣に私の目をみつめて、大きくうなずかれた。

 だが、縦長の治療室入っていくと、硬いベッドにうつぶせに寝かされ、何やら先生の気合いの入った声がすぐ近くで聞こえた。どうやら私の腰あたりに手をかざしているようだ。

 前後を入れて、五分間くらいであったが、

「ハイ、三二五〇円」

 と言わるままに金を払った。

 下りの階段はなおも腰にこたえた。

 

 現代医療では、ブロック注射なるものが、その先端であるらしい。

 これで効果がなければ、手術に踏み切るという。

 レントゲンの台にやはりうつ伏せに寝かされ、背中の骨と骨の間に注射針を刺すのだ。神経の多く集まる場所である。麻酔もかけるのだが、その効果は少ない。

 私は台の両端を思い切りつかんでいたのだが、それでも体は大きくエビのように反った。食いしばった歯の間から止められない声が漏れる。看護師も含めて三人が私の体を押さえ込んだ。

 これは世界で一番痛い注射ではなかろうか。

 局部に五回も注射した。打つたびに、その効果を期待するのだが、すべて泡のように消えた。

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連載では、シティボーイズのお話しはもちろん、現在も交流のある風間杜夫さんとの若き日々のエピソードなども。

プロフィール

大竹まこと

おおたけ・まこと 1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。現在、ラジオ『大竹まことゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。

 
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