平成消しずみクラブ 第14回

病んで候う

大竹まこと

 様々な治療を受けている間、さすがにテレビの仕事は休ませていただいたが、声だけの(月~金)ラジオは続けていて、しまいにはブースのなかに、マットを敷いてもらい、マイクコードを伸ばして生放送をこなした。

 相方の女性はテーブルに座っているので、私には膝下の足しか見えない。そんな放送が三~四日続いた。

 最後には自宅から出ることもできず、自分のベッドで寝たままでその日のゲストだったNHKを退社したばかりの有働美由子と話した。

 不思議とラジオでしゃべっている時だけは、痛みを忘れるのだ。

 

 

 以上、突然の腰痛に襲われた老人のダメ日記である。

 世間にはザラにある話だし、もっと大きな病に苦しむ人々もいる。

 お互い、こんな闘病日記がいつか笑い話になればよいと願う。

 一つ書き忘れた。

 何回か通った針治療院の女先生が

「大竹さん、病気には『日にち治療』って言葉があるのヨ」

 その治療院は足の痺れなども治す専門の所であったが、私の足は一向に治らない。

 私以外にもそんな患者さんが何人も通院してくる。あるお年寄りは、六年もたってから治ったと喜んで報告に来たそうだ。

 急激な腰痛に見舞われた私は、動転してあらゆる医者を駆け回った。

 静かに諭すように言われた言葉が、足の痺れが小さくなった今、しみるのである。

 人間は七〇歳近くなっても、専門治療ではなく、時間をかけて己の体が快方に近づくべく努力をするらしい。

 弱者は弱者のまま終わらないのである。

 足の痺れは、いつか治るかもしれない。

 

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 第13回
最終回  
平成消しずみクラブ

連載では、シティボーイズのお話しはもちろん、現在も交流のある風間杜夫さんとの若き日々のエピソードなども。

プロフィール

大竹まこと

おおたけ・まこと 1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。現在、ラジオ『大竹まことゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。

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病んで候う