特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく 第2回

「4回転トウ」に再び到達した山本草太は、さらに上を見つめていく――

高山真
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 2018年のNHK杯の最初のジャンプはトリプルアクセル(実施はシングルアクセル。ただし、ふたつめのトリプルアクセルは見事に着氷)でした。NHK杯から2ヶ月もしないうちに、4回転ジャンプをプログラムに組み入れるまでギアを上げてきた。私は何よりも、そこに感激していました。

「ギアを上げても、体がついてきてくれた」

 ということなのですから。

 確かにジャンプにいくつかミスは出ました。フリー直後のインタビューでも、ジャンプが抜けてしまったことを悔やみ反省しているコメントがありました。

 ただ、「体力は大丈夫」というコメントが聞けたこと。そして、先を見据えるような強い目の光が、インタビュー中の山本草太からうかがえたこと。そのふたつが、本当に嬉しかったのです。

 力を入れて「漕いで」いるようにはまったく見えないのに、なめらかさとスピード感と重厚感がミックスされたスケーティング。そして、スピンのクオリティの高さ! フライングシットスピンの、足が氷についた一瞬で回転がトップスピードになる爽快感は、山本草太の真骨頂だと思います。

 右足を2度骨折、手術は実に3度経験したという山本は、引退が頭によぎったこともあったそうです。そんな苦しい時期を乗り越えて、2017-18年シーズンから復帰。最初の競技会では、ジャンプは1回転からのスタートでした。2017年の全日本選手権のショートプログラム(2017 Nationals SP)では、トリプルトウ+トリプルトウのコンビネーションジャンプ、トリプルループを含むノーミスの演技を見せてくれました。

 そして2018-19年シーズン、山本草太は、4回転トウ、トリプルアクセル、トリプルルッツとトリプルフリップを再び装着して、戻ってきてくれたのです。

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特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。

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プロフィール

高山真

エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。

 
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「4回転トウ」に再び到達した山本草太は、さらに上を見つめていく――

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