特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく 第3回

内村航平、羽生結弦……ふたりの「レジェンド」が、なおも与えてくれるもの

高山真
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 私が冬季オリンピックでもっとも好きな種目はフィギュアスケートですが、夏季オリンピックでもっとも好きな種目は体操競技です。

 男子体操の絶対的なレジェンドといえば、内村航平。世界選手権は2009年から2015年まで個人総合で実に6連覇、オリンピックの個人総合は2012年のロンドンと2016年のリオデジャネイロで連覇しています。

 体操競技は、オリンピックがある年は世界選手権が開催されないので、2009年から2016年の間、世界一を決める大会の個人総合をずっと制してきたのです。

 内村の体操は、その「美しさ」が常に話題になっていました。

 たとえば、跳馬の、ロイター板(踏み切り板)を蹴って跳馬に手をつくまでの間。そして跳馬から手を放し、空中で回転するときの姿勢。あるいは、鉄棒の離れ業や降り技の姿勢。ゆかのひねり技……。内村の両足は、足の付け根から両ひざ、かかとからつま先までが、どんなときでも紙一枚も入る隙間がないほど、ぴったりと締めています。

「宙返りを回りきる」ことを重視するがゆえに両ひざの間が開いてくることもない。ひねり系で「ひねりきる」ことを重視するがゆえに、かかとからつま先までをぴったり合わせていた姿勢が遠心力で徐々にほどけていくこともない。うなってしまうほどのボディコントロールの見事さです。

 平行棒での、スッと倒立に入るときのバランスの見事さ。「力」ではなく「体のすべてのパーツが、一瞬にして正しい位置に配置される」ことで、すべての技を成立させているような……。

 私にとって、内村の演技は何度見ても感嘆のため息をもらしてしまうほどの引力があります。

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特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。

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プロフィール

高山真

エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。

 
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内村航平、羽生結弦……ふたりの「レジェンド」が、なおも与えてくれるもの