「それから」の大阪 第2回

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める

スズキナオ

荒れ果てた海岸から眺める、鮮やかな夕焼け

公共交通機関で舞洲へ行くには、JR西九条駅前から出ている市営バスに乗る必要がある。駅前を出たバスは北港通りを進んで此花大橋を渡り、30分ほどで舞洲スポーツアイランド停留所へ到着。舞洲は五輪招致の計画段階でスポーツ施設が多数作られ、それが今も残っているためにスポーツの島といったイメージが強く打ち出されている。島内にある「舞洲ベースボールスタジアム」とサブ球場の「舞洲バファローズスタジアム」はオリックス・バファローズの二軍の拠点として使用されており、プロバスケットボールチーム・大阪エヴェッサの本拠地「おおきにアリーナ舞洲」もある。実際、舞洲へ向かうバスに乗っていた乗客の多くは熱心なスポーツファンらしく、オリックス・バファローズの寮を前に記念写真を撮っている姿を見かけたりした。

島の南側には緑も多く、舞洲緑地と名付けられたエリアには手ぶらでバーベキューが楽しめる施設もある。受付で聞いてみたところ、土日は数か月先まで予約が入っているほどの人気ぶりなのだという。

とはいえ、取材時は平日で、島を歩いていてもほとんど誰ともすれ違うことがない。2020年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったが、「サマーソニック」をはじめとした野外音楽フェスも舞洲で開催されることが多いし、人が集まって賑やかな時とそうでない時の差がかなり激しいのだろう。

島の南側、海に面した「シーサイドプロムナード」まで行ってみると釣り人の姿がちらほら。この辺りはあまり手入れが行き届いていない様子で、敷石が欠けていたり剥がれてしまっていたりして歩きにくい。「破損している施設がありますので、注意してください。」という注意書きがあちこちに掲示されている。対岸には夢洲が見え、コンテナと、そのコンテナの積み下ろしをするガントリークレーンが何基もそびえ立っている。荒涼とした景色の中を、行けるところまで行ってみようと歩いていると、この先が立ち入り禁止区域であることを告げる自動音声が突然流れてギョッとした。誰もいない星を守り続けている孤独なロボット、というイメージが浮かぶ。

舞洲南岸から夢洲を眺める(写真は2020年1月に撮影したもの)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島の反対側、北端の海辺へも足を延ばしてみたが、こっちはさらに荒れ果てていた。どうやら2018年の台風21号の被害を受けてあちこち破損したままになっているようだ。ゴツゴツした岩肌に点々とゴミの散らばった海岸。そこを鮮やかな夕焼けが染めていくのをしばらく見つめて帰った。

 

北岸には2018年の台風の被害が残る(2020年1月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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