「それから」の大阪 第2回

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める

スズキナオ

「陸、海、空」から夢洲を眺める

海辺から眺めた夢洲の全景をもっとしっかり見てみたいと思った。となれば、高い所に登るのが一番だろう。新型コロナウイルスの影響を受けて大阪市内をめぐる観光ツアーが軒並み値引きされていると聞いて探してみたところ、舞洲周辺の上空を遊覧飛行するヘリコプターに搭乗できるという触れ込みのツアーが大幅に値引きされているのを見つけた。「夢洲の全景を眺めるのにこれ以上のやり方はないはず!」と思い、参加することにした。ツアーは天保山の大観覧車に乗り、観光船「サンタマリア号」に揺られて最後に舞洲のヘリポートに向かってヘリコプターに乗ることができるという行程である。

 

ツアー当日、梅田から乗り込んだバスは30分ほどで天保山に到着。早速観覧車に乗ることになった。高さ112.5メートルの天保山大観覧車は1997年に開業したもの。一周15分もかかるという大きさで、大阪湾岸エリアのいたる所からその姿が見える。せっかくなので60基あるゴンドラのうち8基だけだという全体が透明ガラスに覆われてスケスケの「シースルーゴンドラ」に乗ってみることに。

天保山の人気スポットも最近はあまり混み合わないようだ(2020年8月撮影)

コロナ禍の影響か、ツアー参加者の他には乗客もおらず、数分待っただけで乗れてしまうのが少し寂しくもある。床下の様子が丸見えのゴンドラにそわそわとした落ち着かなさを感じつつも、天保山のショッピングモール周辺やUSJのジェットコースター、そして舞洲や夢洲まで見晴らすことができた。先日は夢洲を北側から見て、今度は東側から見ていることになる。まあ、どっちから見ても「キリン」の愛称で呼ばれる例の大きなクレーンがそびえ立つ様が目に入るだけなのだが。

観覧車からの風景。奥に見えるのが舞洲(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観覧車を下りた後に乗船したサンタマリア号からも、やはり遠くに夢洲の姿が見えた。そしていよいよヘリコプターである。今日は観覧車から、船の上から、そしてヘリコプターからと執拗に夢洲を眺める一日なのだ。バスは舞洲の北側、小川航空のヘリポートへ向かう。3人乗りの小型ヘリにツアー参加者が乗っては降り、を繰り返す。飛行時間はなんと3分間らしい。「たった3分か、とみなさんおっしゃいますけど、実際にヘリコプターに乗ってみると結構長く感じられると思いますよ」とガイドさんが言う。緊張して30分ほど順番を待ち、いよいよ私が搭乗する番となった。プロペラが回る音が一気に速くなり、轟音のようになったと思った瞬間ふわっと機体が浮かび上がった。不思議と恐怖を感じなかったのは、3分間をこの目に焼き付けようと必死だったからだろうか。

舞洲周辺を遊覧飛行するヘリコプター(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日歩いた舞洲の海岸を見下ろしたかと思うと、目の前いっぱいに日差しを受けて銀色に輝く海が広がる。「あちらが夢洲、万博の開催予定地です。その後にはカジノができる予定です」と、操縦士がアナウンスしてくれる。前方に見えるのはただただ何もないスペースである。「ここに万博会場が……カジノが……」と想像している間にヘリコプターは大きく旋回。再び舞洲の景色が眼下に見えてきたと思ったらもう着陸の時間だ。

遙か上空から見る夢洲の姿(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小川航空の遊覧飛行には様々なコースがあり、15分も乗れば難波や梅田辺りまで見下ろせるそうだ。最近では30分ほどかけて百舌鳥・古市古墳群まで行くコースを利用する客も多いという。世界遺産に認定された古墳群と言えど、陸からでは小高い丘にしか見えない。いつか上空から前方後円墳のくっきりとした輪郭を眺めてみたい気がするが、30分間のフライト料金は10万円を超えると聞き、唇を噛みしめた。

次ページ  いよいよ、夢洲上陸!
1 2 3 4 5
 第1回
第3回 
「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル

プラスをSNSでも

Twitter, Youtube

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める