プラスインタビュー

東大の政治学者が「婚活」を本気で考察してみた

『日本婚活思想史序説』著者・佐藤信氏インタビュー

佐藤信
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――ここ最近の「婚活」あるいは「結婚」をめぐる変化の中で、一番大きなものは何だとお考えでしょうか?

佐藤 やはり「アプリ婚活」です。5年くらい前まで「ネット婚活」と呼んでいたものですが、その当時は、インターネットに接続されているパソコンで条件を設定して自分に合う人を探していくのが、一般的なイメージでした。

それが、スマートフォン用の婚活アプリが提供されて「アプリ婚活」になってからフェイズが変わってきた。とにかく登録者数が尋常ではありません。選択肢が広く提供され、相手を自由に選べるようになった分だけ自分も競争しなければいけない、その流れがますます加速している。

実際、婚活本の中でも、最近は「アプリ婚活」に特化したような本が出てきて、どのアプリがどんな婚活に向いているかとか、登録者の属性や傾向はどうだとか、そういう話題が出てきています。

婚活アプリにおいては自分の情報をいかに売り込むかが重要になります。しかもそこで使うべきテクニックはそれぞれのアプリや登録者の属性の傾向によって違うので、どのアプリが自分に合っていて、どういう風に自分をそのアプリに対して最適化させて売り込むか、アプリ内での評価をいかにして上げるか、個人個人が頑張らなければならないようになってきている。

この先には、「相手からどう見えるかどうか」ではなくて、「まずこのアプリに対して自分がより評価されるためにどうしたらよいか」という発想が待っています。そういう傾向が見られるようになってきたのが、本当にこの4~5年の変化だと思います。新しいフェイズですね。

――コンピュータ相手に自分を演出する婚活……。そこに愛はあるのかと心配になってしまいます。

佐藤 愛があるかどうかというのは古くからあるテーマですね。

本書でも書いた面白い話があります。見合い結婚か、恋愛結婚かということを分析するときに参照されるデータに「出生動向基本調査」という統計があります。このデータにおいて「見合い」か「恋愛」かというのは、実は本人たちの認識ではなくて「どこで出会ったか」で決められています。つまり、見合いや結婚相談所で出会っていると「見合い」に、職場とか幼なじみなどで出会っていると「恋愛」と分類されるわけで、本人たちが実際に恋愛したかどうかは反映されていないのです。

そこで実際に本人たちの認識を聞いているデータがあるんですが、そうすると出会ったのは見合いや結婚相談所でも「恋愛していた」と報告する人が少なくない。出会った場所と自分たちが恋愛したかどうかという認識は別なのです。

このデータは80年代後半のものですけれども、事情は現代でも同じではないでしょうか。きっかけが人為的に設定されたものであったとしても、そこに恋愛感情がないというわけではない。「今の若い人たちはアプリなんかで婚活していて、けしからん!」というのは、「かつて見合いで出会った夫婦には愛がない」というようなもので、そういう話ではないと思うのです。

――なるほど、愛とは、二人が出会ってから育むものですものね。昭和生まれとして、今どきの若者を見る目が変わりそうです。ありがとうございました。

 

文責:広坂朋信/写真:野﨑慧嗣

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日本婚活思想史序説―戦後日本の「幸せになりたい」

プロフィール

佐藤信

政治学者。1988年奈良県生まれ。2015年より東京大学先端科学技術研究センター助教。専門は日本政治外交史。著書に『鈴木茂三郎 1893-1970』(藤原書店)、『60年代のリアル』(ミネルヴァ書房)、共編著に『政権交代を超えて 政治改革の20年』(岩波書店)、共著に『天皇の近代 明治150年・平成30年』(千倉書房)など。

 
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