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日々、動物の生死と直面する作家が考えた「殺生の意味」──羊飼いの作家、河﨑秋子氏インタビュー【第2回】

河﨑秋子・作家

河﨑秋子
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女性と子どもは「生き生きと」さばく

──それにしても、子どもって、生き物を殺すとき、じつに生き生きとしていますよね。この前、キャンプ場に、子どもがイワナをさばいているときの写真が飾ってありまして、その目のキラキラしていることといったら、ありませんでした。

そうそうそう。ニワトリをさばくときでも、女性と子どもは、生き生きしていますね。

──女性もですか?

一度、自分の家の庭先でニワトリを飼っていたご夫婦に、さばき方を教えて欲しいと頼まれたことがありまして。卵を産まなくなってしまったので、自分たちで食べてあげたいんだ、と。そうしたら、奥さんの方は、嬉々としてさばいていくわけです。旦那さんはと言えば、台所の隅っこで「もう、終わった?」「もう、終わった?」という感じで。私の2番目の兄は、今でも、できる限り羽むしりさえ避けたがっていますから。

──ニワトリを絞めるときって、どうするものなんですか。

私の場合は、脱臼させない程度に首をひねって動脈を切りやすい状態にして、ピッですね。そうして、まだ痙攣してビクビクしていますけど、しばらく血を抜きます。首を切断しちゃうと、そのまま逃げるので。

──逃げちゃう?

首のない状態で、走り回っちゃうから。

──本当ですか?

ええ。筋肉反射がずっと続いちゃうんです。

 

編集者のストップが意外とかからない

──1作目『颶風の王』の、人間と動物が生きるため互いに食い合うシーン、そして2作目『肉弾』の、人間と野生化した飼い犬が文字通り命を懸けて死闘を繰り広げる場面は衝撃的でした。ああいったシーンを描くとき、ここまでならいいだろうという自分なりの境界線みたいなものはあるのでしょうか。

そこは書き過ぎた場合は、編集者がストップをかけてくれるだろうと期待しているんですけど、意外とストップがかからない(笑)。この前、『小説すばる』で書かせてもらったアホウドリの話も、けっこうひどく書いたなと思ったんですけど……。善悪の箍が外れたタイプを主人公にして、とにかくアホウドリを撲殺して羽毛を得るという話なんですけども、案外、女性に人気だったと聞きました。

──女性の本質はサディスティックなんですかね。

全然抵抗ないのかもしれませんね(笑)。

──『肉弾』も、ほとんどスルーですか? 赤ちゃんが豚に襲われるシーンなど、相当、怖かったですけど。豚って、あんなにどう猛なのかと。

十勝の開拓村で、実際にあった話なんです。『肉弾』はフィクションなので、意図的に気持ち悪く書いているところはありますけど。ニュージーランドで働いていたとき、たまに腹がぱんぱんに腫れているような腐った羊の死体を見つけると、ヒモに括り付けて豚を放牧しているところに四輪バギーで引っ張っていくんです。そうすると、2時間もしたら、骨もなくなってしまうんです。

(取材・構成 中村計)

【最終回】は5月7日に掲載予定です。

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プロフィール

河﨑秋子

羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。2012年『北夷風人』北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年『颶風の王』三浦綾子文学賞受賞。翌年7月『颶風の王』株式会社KADOKAWAより単行本刊行(2015年度JRA賞馬事文化賞受賞)。最新刊に『肉弾』(KADOKAWA)。

 
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