著者インタビュー

今こそ「人が死なない防災」を

片田敏孝インタビュー

片田敏孝
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 これまで経験したことのない、異常な豪雨。

 見たこともないコースを進む、大型台風。

 そして、いつ、どこを襲ってくるか分からない地震と津波の恐怖――。

 

 東日本大震災の1年後、2012年3月に刊行した集英社新書『人が死なない防災』の冒頭に、以下の一節がある。

 

 今までは「ない」と思い込んでいたようなことが、起こるかもしれない。

 

 まさに今、「ない」と思い込んでいたようなことが、日本各地で現実に起こっているのではないか。

 同書は刊行以来、7刷を重ねるロングセラー。著者は、「主体的な避難行動」をキーワードに防災教育を実践してきた片田敏孝氏である。

 タイトルが示すように、防災における第一優先は、命を守ること。そのために、どんな行動を取ればいいのか。どんな心構えを持つべきなのか。

 気象災害が頻発するなか、あらためて、「人が死なない防災」のあり方について片田氏に語ってもらった。

 

©片田研究室

 

「特別警報」でも「避難指示」でも動かない

 

 新書『人が死なない防災』のあとがきで、私はこのように書きました。

「長年進められてきた行政主体の防災に国民は頼りきっており、自分の命でありながら、それを守るのは行政の責任とまで言いきる国民が多いのが現状である。このままの姿勢で『その時』を迎えるなら、『役所のせいだ!』と言いながら命を落とす事態になりかねない」

 残念ながら、記憶に新しい西日本豪雨においても、国民の意識はあまり変わっていないと言わざるをえません。

 気象庁は今回の豪雨で、11府県に「特別警報」を出しました。通常の大雨警報や洪水警報ではない、気象機関としての最終通告で、きわめて異例のことです。それについて、マスコミからこんな質問を受けたのです。「情報を乱発するから国民が認知できない、という声がある。情報の出し方に問題があるのではないか」。私は唖然としました。

「特別警報」には基準があって、それに達したから出しているわけです。乱発などできるものではありません。むしろ、普段は慎重すぎるくらい慎重な気象庁がそこまで踏み込んだのだから、本当に深刻な事態が起きていると考えるのが自然です。それなのに、「情報の出し方が悪い」というクレームが先に来る。これは何なのか。

 また、「避難指示が遅かった」という指摘もありましたが、その前に避難勧告をしているわけです。それでも逃げない住民がいるから、最後のぎりぎり危ない状況で最後通告として「避難指示」を出す。最後通告に対して「遅い」と文句を言うこと自体がおかしな話です。

 どんな形でどんな情報を出そうが、それを自らの行動につなげようとしない人たちがいる。何で、こんなことになってしまっているのか。

 

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プロフィール

片田敏孝
1960年岐阜県生まれ。東京大学大学院情報学環特任教授。群馬大学名誉教授。専門は災害社会工学。災害への危機管理対応、災害情報伝達、防災教育、避難誘導策のあり方等について研究するとともに、地域での防災活動を全国各地で展開している。特に、釜石市においては、2004年から児童・生徒を中心とした津波防災教育に取り組んでおり、地域の災害文化としての災いをやり過ごす知恵や、災害に立ち向かう主体的姿勢の定着を図ってきた。2012年には、防災の功労者として2つの内閣総理大臣表彰を受賞している。著書に「人が死なない防災」 (集英社新書)、「3.11釜石からの教訓 命を守る教育」(PHP研究所)、「子どもたちに『生き抜く力』を~釜石の事例に学ぶ津波防災教育~」(フレーベル館)、「みんなを守るいのちの授業~大つなみと釜石の子どもたち~」(NHK出版)など。
 
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