2011年3月、福島第一原発事故で
日本の原発は終焉を迎えたかに見えた。
大津波の襲来という知見が事前にあったにもかかわらず、
規制当局は運転継続を黙認して過酷事故が発生。
安全神話に依存していたため防災体制はないに等しく、
住民避難は混乱を極めた。
そして国内の原発はすべて停止し、
「原子力ムラ」は沈黙した。国民は学んだはずだった。
だが、「懺悔の時間」はあっという間に終わった。
あれから10年以上が経ち、
ハリボテの安全規制と避難計画を看板に、
「電力不足」キャンペーンのもと進められる原発再稼働。
その実態を、丹念な調査報道で告発した
『原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓』
著者による最新リポート。
*部署名・肩書は取材当時のものです。
取材=日野行介・ジャーナリスト/作家
長期的な原油価格の高騰と、ロシアのウクライナ侵攻に伴う「エネルギー危機」を背景に、原発の再稼働を支持する声が高まっている。岸田文雄首相は2022年7月14日の記者会見で、電力需給のひっ迫が予想される今冬に原発9基を稼働させるよう指示したことを明らかにした。国内の各紙はおおむね「今冬、最大9基の原発稼働指示」と見出しを打った。
この見出しを一読して、「ああ、東京電力福島第一原発事故が起きてからずっと停まっていた国内の原発を再稼働するんだな。原発再稼働は嫌だけど、電気が足りないなら仕方がないかな」と感じた人も多いだろう。だが、それは誤解だ。言葉は悪いが、騙されていると言ってもよい。
なぜなら、この9基はすべてフクシマ後に策定された新規制基準による安全審査に「合格」済みで、既に再稼働している原発だからだ。安全審査を担う規制委(原子力規制委員会)に対して合格を出すよう促す、あるいは既に合格済みの原発の再稼働を了解するよう地元自治体に求めるという話ではない。電力確保のアピールにかこつけて、既に進行している再稼働を改めて正当化するだけの話だ。
※岸田首相が述べた9基の内訳=各報道による
関西電力
美浜原発3号機
大飯原発3、4号機
高浜原発3、4号機
四国電力
伊方原発3号機
九州電力
玄海原発3号機
川内(せんだい)原発1、2号機
フクシマが残した最大の教訓
ところで岸田首相による記者会見の前日、フクシマの被害を巡って仰天の司法判断が下された。東京電力の個人株主が起こした株主代表訴訟で、東京地裁は約13・3兆円を東電に支払うよう旧経営陣4人に命じる判決を言い渡した。
東電の損害と認定された約13・3兆円の内訳は、被災者への損害賠償(約7・1兆円)、除染・中間貯蔵(約4・6兆円)、廃炉・汚染水対策(約1・6兆円)。もちろん4人が個人的に支払えるはずがない。そうすると、この判決の意義は、過酷事故(シビアアクシデント)による被害の大きさを「13兆円」という金額で改めて可視化したことにあるかもしれない(しかも将来的にこの金額で収まるとはとても考えられない)。
あのような過酷事故を二度と繰り返さないために最も確実な方法は、原発を再稼働しないことだ。各原発のプールには後始末の道筋さえ定かでないまま大量の使用済み核燃料が保管されており、再稼働しなくとも事故のリスクはゼロにはならないが、「進むも地獄、退くも地獄だ」「今さら停めても仕方ない」とばかりに、なしくずし的に再稼働を進めるのは無責任の極みと言うほかない。運転中の原発は事故のリスクが格段に高まるというのが、フクシマが残した最大の教訓のはずだからだ。
だが残念なことに、フクシマが残したこの最大の教訓は、その後の原発行政にまったく生かされていない。この国の為政者たちは、フクシマで機能しなかった安全規制と防災の再興を前面に押し出し、原発再稼働を進める道を選んだのだ。国民の側から見れば、再稼働の道など選んだ覚えはないだろうが。
原発再稼働の道を選ぶ場合、再び動かさない以外のフクシマの教訓を原発行政に反映させることになる。それは事故を未然に防ぐ安全規制の強化と、仮に事故が起きても被曝を最小限に抑える防災体制の整備――の二つだ(ここでは両者が論理的に矛盾していることには触れない)。この二つを落とし込んだ制度が、新たに発足した原子力規制委員会と安全審査の「合格ライン」である新規制基準、そして対象範囲を原発から30キロ圏まで広げた避難計画を中核とする原子力災害対策指針(防災指針)となる。
福島第一原発事故の発生から4年5カ月後の2015年8月、新規制基準による安全審査に合格し、避難計画の策定を済ませた九州電力川内原発1号機が再稼働した。その後、他の原発も次々と再稼働していった。
だが、実はフクシマの教訓によって生まれ変わった規制と防災の新制度がハリボテに過ぎず、安全神話に依存していただけの事故前と基本的に変わらないとしたらどうだろう。このまま再稼働を進めて良いのだろうか?
8月に発刊した『原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓』(集英社新書)は、フクシマの教訓を生かしたふりをして、国民を欺いて進む原発再稼働の真相を暴露する詳細な記録である。
取材のきっかけは「秘密会議」の録音
フクシマ後の安全規制について取材を始めたきっかけは、ある会議の隠し録音が私の元にもたらされたことだった。
2018年12月6日午前11時。東京・六本木にある規制委の委員長室に、更田豊志委員長、石渡明委員、原子力規制庁の安井正也長官と荻野徹次長ら幹部が集まり、会議が始まった。議題は翌週12日の定例会合(公開)で決定する予定の関西電力3原発(美浜、大飯、高浜)の火山灰問題への対応方針だった。
関電の3原発は2017年までに安全審査に「合格」した。だが過去の文献資料を基に、大山(鳥取県)の噴火を対象とした関電の火山灰想定を過小評価だと指摘する意見が、国内の火山研究者から寄せられた。簡単に言うと、安全審査とは電力会社が当該の原発で生じ得る自然リスクを設定し、それに耐えられることを証明する作業だ。想定を超える火山灰が降れば、外部電源の喪失後に原子炉の冷却機能を支える非常用ディーゼル発電機のフィルターが目詰まりを起こし、機能不全に陥る可能性が生じるというロジックになる。もちろん具体的なリスクも問題だが、役所にとって重大なのは、自然災害の想定リスクが引き上がった場合の規制のあり方というのは、福島第一原発事故と同じ問題であることだった。
規制委が1年にわたって現地調査も交えて検討した結果、2018年11月21日の定例会合で過小評価を認めた。直後の記者会見で、更田委員長が「新知見」であることをアピールしたのは、安全審査における文献の見落としを糊塗したようにも見える。
ところで、定例会合に先立って行われるこの会議は、関係者の間で「委員長レク」と呼ばれており、一般に公開されていない。それどころか存在自体が明らかにされていない。フクシマにおいて原子力業界における産官学の不透明な関係に批判が集まったことから、新たに発足した規制委は「会議の公開」を原則に掲げ、毎週水曜日の定例会合(公開)ですべての意思決定を行うとしていた。だが、多いときには1回の定例会合で5、6項目を決定するのに、週1回2時間ほどの定例会合で議論を尽くせるはずもない。定例会合に至るまでの間に「意思決定過程」が存在するのは自明のことだったが、規制委は一切明らかにしていなかった。
問題の会議に話を戻したい。出席者に配られた資料には、関電原発の火山灰問題の対処法として、新たな層厚想定を書き込んだ原子炉設置変更許可申請を出すよう関電に行政指導する案(①文書指導案)と、まずは火山灰の層厚を再評価するよう関電に命じる案(②報告徴収命令案)――の二つの案の手順が併記されていた。「指導」と「命令」なので、一見すると②案のほうが関電に厳しいようにも見えるが、再評価の結果、関電が自発的に設置変更許可を申請すると見込んでおり、最終的に安全審査をやり直すのは両案とも同じだった。
「停めたくない」本音
この資料を見た更田委員長は「これを見たときに①のほうがすっきりするんだけど、法務上難しいんだろうなというのは私にも分かるので、まず、そちらの見解を聞かないと」と、検察庁出向の法務担当者に尋ねた。法務担当者は「(関電が)設置変更許可申請をするということは、災害の防止に支障があると外部に示すことになり、ただちに適合させる義務が生じやすい。②のほうはサイト(原発)に影響するか分からないポジションに立つので整合性がある」と、更田委員長の見立てに沿う答えを返した。
自らの意図が通じたからだろう、少し得意気に更田委員長が続けた。
「いずれにしても差し止め訴訟を起こされる可能性があるわけだ。訴訟だと基準不適合だという論理を生みやすい。基準をそこのナチュラルハザードに耐えることって書かれちゃっているから無理、難しいんだろうね。変更許可申請を求めるってことは、変更許可に不備があるから直せってことになる」
ポイントは、想定リスクが引き上がった結果、原発の安全基準(新規制基準)を満たしていない「基準不適合」の状態になったと規制委が認めるかどうかにあった。安全審査で基準を満たしていると判断して原発の運転(再稼働)を許すのだから、裏返せば、基準不適合と判断した原発は運転を停めるのが当然のはずだ。そもそも、基準不適合の原発はまずは停めるべしというのも、フクシマの教訓であるはずだ。だが、どうやら更田委員長は基準不適合を認めたくないらしい。
更田委員長が再び法務担当者に尋ねた。
「本件の場合、工事を要するとしたときに猶予期間って設けられるの? (火山灰の)層厚を評価し直したら建屋つぶれちゃうとなった時点で基準不適合状態が生まれちゃう。その状態でも運転は可能か不可能か?」
猶予期間というのは、新知見によって想定リスクが引き上がった、あるいは規制委が引き上げた基準を満たすよう追加の安全対策を電力会社に求めるという「バックフィット」における対策完了までの期限を指す。これは定期検査で停止中にのみ工事を実施する前提であり、裏返せば、基準不適合だからと言って、運転を停めるつもりはないということになる。
法務担当者が「基準不適合だからと言って、必ず停止しなければいけないということはない」と答えると、更田委員長はこう結論を出した。
「②は正義にもとるというなら、そんなもん停まろうが何しようが①でいくとなるけど、そういう話でもなさそうだしね。そこで停める、停めないって話になると改善というのはできない話になる」
いくぶん言い訳めいて聞こえるのは、フクシマの教訓に背を向けた判断であると自覚しているからだろう。
翌週12日の定例会合では規制庁から②案だけが提示された。担当者が「大山は活火山ではないので、停止は求めないとしてはどうかということでございます」と付け加えると、5人の委員から異論は出ず、わずか5分ほどの議論で②案が認められた。一方、秘密会議の議論は約50分間。どちらが本当の意思決定の場であるかは明白だった。
規制委の報告徴収命令を受けて、関電は2019年3月29日、3原発の火山灰想定を最大で約2倍に引き上げる報告書を提出。1週間後の4月5日、規制委は関電に直接意向を尋ねる公開会合を開いた。報告書の内容を確認するやり取りが1時間近く続いた後、規制委の担当者がおもむろに切り出した。
「現在は設計層厚として3発電所とも最大10センチということで許可を受けている。この結果を受けて、関西電力さんとしては原子炉設置変更許可申請を行うと考えてよいですか?」
秘密会議の配付資料に沿って、自発的に申請するよう関電に促した。これなら規制委は「基準不適合」と認めなくて済み、原発反対派から差し止め訴訟を起こされる懸念も小さい。
だが、ここで規制委にとって予想外の事態が起きた。関電の担当者が「この規模の噴火の可能性は十分低いと考えており、再申請する必要はないと考えています」と答え、規制委の要求を拒否したのだ。
そのため規制委は5月29日、設置変更許可申請をするよう関電に命じる方針を示した。この際も「大山は活火山ではなく、差し迫った状況にはないのでただちに運転を停止させる必要はない」として、やはり運転停止は求めなかった。先に「停めない」と言明してしまったため、関電が強硬姿勢に出てきたからといって方針を変えるのは難しい。要は「自縄自縛」に陥ったのだ。
この通称「バックフィット命令」は、改正原子炉等規制法で新たに盛り込まれた条文で、規制当局が基準不適合と認めた場合に、運転停止や修理といった安全対策を電力会社に命じることができる規定だ。
この関電原発の火山灰問題がバックフィット命令の初適用だったが、発表文にその記載はなく、同日午後にあった更田委員長の定例記者会見でも触れられることはなかった。むしろ初適用であることを伏せるかのように今回の対応をこう自画自賛した。
「(規制委は)これまで、引き上げられた要求水準にフィットしてくれというバックフィットはいくつも進めてきた。今回は新たな知見に基づく要求への適合を求めるという状態が生まれた。明確で分かりやすい手法を取るべきだろうということで、設置変更許可が必要だという判断をした。一番分かりやすいのは命令。バックフィットは福島第一原発事故に対する反省から生まれたもので、地震・津波・火山(噴火)といった自然現象で新しい知見が得られて、その脅威が従来考えられていたものよりも厳しいと認定した場合には、設計に対して変更を要求していくというのは改正された法律(原子炉等規制法)の精神に則ったものだ」
バックフィットとバックフィット命令
バックフィット命令の初適用なのに、なぜ更田委員長は「いくつも進めてきた」と話したのだろうか。この「バックフィット」と「バックフィット命令」の違い、いや使い分けこそが、生まれ変わったはずの原発規制の本質を読み解くカギだった。
「バックフィット命令」は2012年6月に成立した改正原子炉等規制法で新たに導入された。細野豪志原発事故担当相は改正に先立つ記者会見で「バックチェックという新たな規制を設けても、過去の原子炉は継続して動かされてきた。その制度は根本的に改まる」と述べている。また法改正直後の国会で、経済産業省原子力安全・保安院の山本哲也・首席統括安全審査官は「現行の法律は基準不適合が判明しても使用停止や許可の取り消しができる規定がない。今回の法改正で、最新の知見に基づく新たな基準への適合を義務付けるバックフィット制度が導入される。新たな制度では使用の停止や設備の改造、場合によっては許可の取り消しもできる」と答弁している。
この段階ではまだ規制委は発足しておらず、新規制基準も施行されていないが、再稼働しなければ運転を停める必要はないのだから、この法改正の延長線上に再稼働があるのは言うまでもない。
細野、山本両氏の発言からは、「基準不適合」の状態にあるのを認識しながら、運転を停める法的権限がなかったために福島第一原発事故を防げなかったと釈明する意図が垣間見える。少し意地悪く言えば、過酷事故を引き起こした原因を規制の不作為ではなく、法の不備にすり替えたようにも見える。
いずれにしても、地震や津波、火山噴火など自然災害に関する新知見が出てきて、既存の許可内容では事故を防げなくなる恐れが出てきた場合、つまりはフクシマのような基準不適合の状態が生じた場合に、今度は運転を停めて安全対策を取るというのだから、フクシマの教訓を生かす新制度のはずだ。
ところで新規制基準をクリアした原発の再稼働が始まってから既に5年(取材時点)。前述したように、関電の火山灰問題が初めてのバックフィット命令だった。それでは、「命令」が付いていない「バックフィット」とはいったい何だろう。「バックフィット」の定義を尋ねたところ、規制庁広報室から以下のような回答が返ってきた。
「新たな知見に基づく新たな規制を既存の原子力施設にも適用する行為をバックフィットと呼んでいます。新たな技術・知見を踏まえて現行の基準を適用する場合や、新たに定められた基準を適用する場合があります。基準の適用にあたっては、対象となる施設が合理的期間内に新たな規制に適合することが担保されれば足りるので、経過措置として一定の猶予期間が設定されます」
続いて、これまでのバックフィットの適用数を尋ねた。返ってきた答えは、関電火山灰問題の「命令」を含む11例(2020年4月時点)。このうち基準不適合と認めて運転を停めたことは一度もない。
回答から浮かび上がってきたバックフィットの基本的考え方は以下の通りだ。
・基準不適合だけではなく、規制委の要求引き上げにも基づく
・運転停止を原則としていない
そもそも地震や津波、火山噴火といった自然災害は予知できない。基準不適合が判明した場合は即座に運転を停めて安全対策を急ぐべき――というのがフクシマの教訓だったはずだ。だとすれば、このバックフィットの運用はフクシマの教訓を無視しているではないか。秘密会議の隠し録音によれば、運転を停めたくないため、基準不適合と認めることを回避したようにも聞こえる。最終的にバックフィット命令を出したのは、目論見が外れて関電が強硬姿勢に出てきたからに過ぎない。規制委がフクシマの教訓を生かしているかのように装うため、「バックフィット」というマジックワードを使っている疑いが浮かんできた。
事故前と変わらない原発規制
「バックフィット」と「バックフィット命令」の違いについて、定例会見で更田委員長に直接尋ねた。すると、更田委員長は「バックフィットとバックフィット命令は別物です。分かっています?」と、少し得意気に問い返した後、「バックフィット命令というのは、バックフィットを実現するときの方法の一つでしかない。DNP(関電火山灰問題)より先行するバックフィットはいくつもあって、それぞれさまざまなやり方でバックフィットを実現させてきた」と、またしても「バックフィット」の意義をアピールした。
運転を停めないのであれば、電力会社は規制委が求める安全対策を受け入れるに決まっている。だが、それではフクシマの教訓を生かしていることにはならない。むしろ、運転を停めない前提で、基準不適合と認めることを意図的に避けているのだから、フクシマ以前より巧妙になったというほかない。安全規制の実態がフクシマ以前と変わらないのに、フクシマの教訓を生かして変わったかのように装っているとしたら重大な問題だ。
「バックフィット」というマジックワードの裏に潜む欺瞞を更田委員長に「自白」してもらうため、核心に踏み込んだ。
――「要求の引き上げ」でも「基準不適合」でもバックフィットに変わりないのでしょうか?
「そうですね。後から出てくる科学的知見によって要求水準を引き上げたものに対しても、バックフィットという言葉を使っています」
――そうすると、バックフィットは事故後に新たに導入されたものなのでしょうか?
「……」
――「バックフィット」という言葉は事故後に導入されましたね?
「はい」
――事故前は行われていなかったですか?
「事故前であっても不可能ではなかったと思う。バックフィットというのは、私たちにとってやりやすい状態になったけれど、ゼロから1になったわけではなくて」
――確認ですが、事故後に新たに導入されたのはバックフィットという言葉以外にはバックフィット命令(という法的権限)と考えて良いのでしょうか?
「どうだろう……。私は日常、そこまで意識してバックフィットという言葉を使っていないので……。バックフィット命令というのは強力な武器なので、存在することによって、ほかの手法に対しても有利に働いていると思いますが、ただ、あの、どうですかね……。日常的にバックフィットという用語を使うときに、条文上のバックフィット命令だけを意識して使っているわけではありません」
関電から「規制委はどうせ運転を停めない」と足元を見られており、バックフィット命令の存在は有利に働いていない。そして、規制当局のトップがあれほど自画自賛していた「バックフィット」は厳密な定義がなく、フクシマ以前から行われていた行政指導による安全規制と変わりないというのだ。安全規制は生まれ変わっていない。生まれ変わったかのように装っているだけだ。(続)
プロフィール
(ひの こうすけ)
1975年生まれ。
ジャーナリスト・作家。
元毎日新聞記者。
社会部や特別報道部で福島第一原発事故の被災者政策や、原発再稼働をめぐる安全規制や避難計画の実相を暴く調査報道に従事。
『除染と国家 21世紀最悪の公共事業』(集英社新書)、『調査報道記者 国策の闇を暴く仕事』(明石書店)、『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』(いずれも岩波新書) 、『原発棄民 フクシマ5年後の真実』(毎日新聞出版)等著書多数。