著者インタビュー

『若者よ、猛省しなさい』 下重暁子  

下重暁子・作家

下重暁子
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若者よ、「変わり者」たれ

──本書に登場する下重さんの子供時代や学生時代のエピソードには、下重さんならではの感性をうかがわせるものがたくさんあります。

 私はクモが大好きで、小学校の夏休みの自由研究でクモの研究をしたら、みんなに気持ち悪がられたんです。でも全然気にならなかった。だってそれが私の感性だし、人と違うほうがうれしかったから。人と同じなんて自分に何もない証拠ですからね。高校時代は制服が気に入らなかったから、自分でデザインしてガラッと変えちゃったんです。そうしたら先生からとんでもないと?られた。そこで少し譲歩して、ちょっとアレンジを加える程度にしたの。遠目にはほぼ同じに見えるくらいにはしましたね。そしたら先生もそれ以上は何も言いませんでした。ありがたかったです。
「変わっている」ということは大事なことです。私はみんなに変わり者になってほしい。変わり者であることこそ、若者だと思っているんです。そして、ちゃんと抵抗すること。抵抗というのは若者のひとつの力であり、権利です。反発、反抗、批判、それなくして若者ではありえません。

──経済的自立と精神的自立、このふたつが不可欠であるともおっしゃっています。

 今は確かに大変な時代ではあると思うけど、人に食べさせてもらっていたら自由なことはできないし、言えません。人を食べさせるのは大変だけど、最低限自分一人を養うことは健康な人間ならば使命かなと思うんですね。
 精神的自立のためには自分で決めることが大事です。すべてに対して自分で感じ、考え、決める。自分で決めたのなら文句の言いようがないから腹の据わり方も変わるんですよ。
 先日、たまたま作詞家の阿木燿子さんにお会いし、私の大好きな山口百恵さんの話になりました。歌唱力に加え、あれだけの歌詞の咀(そ)嚼(しやく)力を持った人ってなかなかいませんよねという話をしたんです。阿木さんがおっしゃるには、百恵さんは何事も自分で決めて行動するそうです。阿木さんに作詞を依頼したのも百恵さんのほうからだったと。まだ百恵さんが十代のころの話です。本当にすごい人だとおっしゃっていました。
 経済的自立と精神的自立がなければ、本当の自由は手に入らないんです。もちろん今すぐでなくてもいい、試行錯誤を重ねてそれらを獲得していくのが人生なのかもしれません。

──「環境を変えると自分が変わるのではなく、自分を変えると環境がひらけてくる」という言葉も印象的でした。

 うまくいかないときに環境のせいにしたらそこで終わりですよね。そうではなく、まず、その場で自分が少しでも楽しむための努力をするんです。楽(らく)をするためじゃなく、楽しむため。「らく」と「たのしい」が同じ漢字を使うことに、私は違和感があるんですよ。楽しみは楽なところにはなく、しんどいところにこそ存在するものだから。私の人生も、しんどい状況でもがいた先にひらき始めました。
 今はネットなどで情報がすぐにとれる時代です。だから楽しいことも恋愛も何もかも、向こうから形になってやってくると錯覚してしまいがちかもしれませんが、そんなわけはないんです。楽しいことは自分の中からつくり上げなきゃ。

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『若者よ、猛省しなさい』

プロフィール

下重暁子

1 9 5 9年早稲田大学卒業後N H K入局。アナウンサーとして活躍後、民放キャスターを経て文筆活動に入る。著書に『鋼の女―最後の瞽女・小林ハル』『老いの戒め』『持たない暮らし』『家族という病』『家族という病2』『母の恋文』等多数。

 
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