著者インタビュー

『若者よ、猛省しなさい』 下重暁子  

下重暁子・作家

下重暁子
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自分が何者なのかを知るために

──本書では「自分を掘る」ことの大切さについても繰り返し述べられています。

「自分を掘る」には、何についても「なぜ、なぜ」と問いかけていくんです。たとえば、自分が美しいと感じるものについてなぜそう感じるのか、幼少期の思い出やきっかけがあるのかなど、どんどん自分に問いかけていく。するといつか〝根っこ〞に行き当たります。
 若いときの話ですが、「紫陽花寺」として有名な鎌倉の明月院にある男性と行ったんです。だいぶ年上の人で、恋人ではないけれど結構仲はよかったのね。紫陽花の盛りの季節でした。二人で参拝を終えると、彼が「先に行くよ」と階段を降りていったんです。そのとき、それまでどこかよそよそしく感じられていた紫陽花たちが、パッと心を開くように彼の方に向かうのが私の目にはっきりと見えました。私にはつれない紫陽花が彼には親しげに何か訴えかけている──これはなぜ? なぜ? って考えて、「あ、そうか、彼は以前、ほかの誰かと、ここに来たことがあるんだな」と思い至りました。いままでにない奇妙な感覚でした。
 私のこの気持ちは何? ってまた自分に問いかけた。で、ずーっと考えていって気づきました。嫉妬ですよ、嫉妬。嫉妬なんてできればあまり持ちたくない感情ですよね。彼とは恋人ではなかったけど、それでも私はあの瞬間、嫉妬したんだとわかって納得しました。これが「自分を掘る」ことだと思うんですね。

──掘る作業が、自分の知らない自分や埋もれていた感性に出会わせてくれることもあるわけですね。自分の人生を切りひらいていくことにもつながりそうです。

 そうです。だから自分を掘ることはとても大切。だって自分が何者なのか知りたいでしょう? 人と同じことだけして気づいたら一生が終わっていたなんて、そんな人生おもしろくないですよね。人生は長いんです。自分の道を一歩ずつ歩いていくのは大変なことではあるけれど、どんなに楽しいことか。今現在の若者と元若者、すべての人たちがそのことに気づいてくれたらと思っています。そのためにももっと自分本来の感性に目を向け、それを大事にしてほしい。そして死ぬまで「若者」でいてほしい。この本はそんな思いで書きました。
 読みながら、みなさんの中の「若者」にもう一度出会ってもらえたらと願っています。

しもじゅう・あきこ ● 作家

1 9 5 9年早稲田大学卒業後N H K入局。アナウンサーとして活躍後、民放キャスターを経て文筆活動に入る。著書に『鋼の女―最後の瞽女・小林ハル』『老いの戒め』『持たない暮らし』『家族という病』『家族という病2』『母の恋文』等多数。

2017年 青春と読書 2月号「本を読む」より

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関連書籍

『若者よ、猛省しなさい』

プロフィール

下重暁子

1 9 5 9年早稲田大学卒業後N H K入局。アナウンサーとして活躍後、民放キャスターを経て文筆活動に入る。著書に『鋼の女―最後の瞽女・小林ハル』『老いの戒め』『持たない暮らし』『家族という病』『家族という病2』『母の恋文』等多数。

 
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『若者よ、猛省しなさい』 下重暁子  

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