財務省の決裁文書は極めて真っ当なため改ざんされた

瀬畑源
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──森友問題以外にも、自衛隊の南スーダンPKO派遣をめぐる「日報」の問題や、今年に入ってからは「裁量労働制」に関して、厚生労働省が国会に示した調査結果に不自然な点が指摘され、さらにはその調査結果の根拠となったデータの保存が問題になるなど、安倍政権の下で「公文書」の扱いと「情報公開」に関する問題が頻発しています。

 その基本的な背景には、日本ではまだ「公文書」が国民全体の財産であるという理解が広がっておらず「情報公開」や「公文書管理」の重要性について、官僚や国民に広く共有されていないというコトがあると思いますね。そのため公務員の中にも情報公開制度を快く思っていない人たちが、少なからず存在する。

 そこで彼らは情報公開法の対象となる「公文書」の定義を限定し、その代わりに「私的メモ」と言われるような「公文書ではない文書」を作成したり、敢えて「議事録」を残さないことで政策決定の「過程」を見えないようにするやり方が広まっていた。

 そうした状況をなんとかしようと、2011年に公文書管理法が制定されてから、既に7年が経っていますが、一連の出来事を見ていると、未だにその精神が徹底されていないことを痛感せざるを得ません。その結果、何が起きているのか? 例えば、国会では昨年から国有地売却について、財務省は一貫して「森友学園との会談記録は存在しない」と主張し続けていました。それにつられて野党のほうも「本当に森友学園との会談記録は存在しないのか?」と問い続けていた。

 ところが、今年1月になって、財務省は新たに300ページにも及ぶ資料が見つかったと公表します。財務省とすれば、会計検査院からの要請や、民間からの情報公開請求もあり「公開せざるを得ない」と判断したのでしょうが、財務省はその資料を「森友学園との会談記録」ではないと主張しているため、嘘をついていたわけではないという理屈になるわけです。

 しかし、公文書というのは本来、行政の意思決定に関わる内容や責任だけでなく、その途中経過も記録することで、後からの検証が可能にすることにも大きな意味がある。そもそも公文書は国民全体の財産なのですから、本来は国民が「知りたい情報」を出すのが情報公開制度の基本であるべきだと思います。

 ちなみに、私はかねてから「不祥事が起きれば、この法律は根付くんじゃないか」と思っていたのですが、自衛隊南スーダンのPKO日報問題や、森友、加計問題などを経て、少しずつ「公文書」の重要さや情報公開の意味を理解してくれる人が増えてくれるのではないかと期待しています。

 また、布施祐仁さんの粘り強い情報公開請求によって露呈した「自衛隊PKO日報」の存在が象徴するように、民間やメディアによる「情報公開請求」が少しずつ、その成果を上げていることも、重要な変化だと思います。

──日本の公文書の扱いを改善し、情報公開を進めるためには、何が必要でしょう?

 丸山真男が「民主主義は権利の上に眠るものには与えられない」と言ったように、大切なのは、私たち自身が声を上げ続けていくことです。「こういう事をやったら、叩かれる、まずいんだよ」「公文書を勝手に捨てたら、怒られるんだよ」「我々には知る権利があるんだよ」ということを、粘り強く訴え続け、その積み重ねの上に、この国の公文書管理や、情報公開の在り方が少しずつ変わってゆく。

 そこで大事なのは、仮に情報公開を求めて「本来あるべきもの」が出てこなかったとしても、諦めないことでしょう。誰がどう考えても「本来あるべきもの」が「存在しない」と言われるならば、その「存在しない」という回答事態もひとつの「ファクト」であり、次は「あるはずのものを、なぜか無いと言っている」という事実が、既に別の意味を持つからです。

 もちろん、公文書の「ある、なし」や「公開・非公開」という次元をはるかに超えた「改ざん」などは絶対にあってはならないことで、その意味でも今回の「財務省による決裁文書改ざん」については、徹底的にその真相を追及すべきだと思います。繰り返しになりますが「公文書」の信頼を失うことは、行政全体の信頼を失うことでもあり、それは「国」の存立そのものを脅かす大問題です。

 それほど深刻な事態を引き起こした要因はどこにあったのか、そしてその「責任」は誰にあるのか、この問題を「曖昧」なままで終わらせることがあってはならないと思います。

取材・文/川喜田研  写真/村上宗一郎

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プロフィール

瀬畑源

1976年、東京都生まれ。一橋大学大学院社会学研究科特任講師を経て長野県短期大学准教授。一橋大学博士(社会学)。日本近現代政治史専攻。著書に『公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究』(青弓社)、共著に『国家と秘密 隠される公文書』(集英社新書)。共編著に『平成の天皇制とは何か 制度と個人のさざまで』(岩波書店)などがある。

 

 
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