『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』 松井優征  佐藤オオキ 著

極限状況では自らを過信する者から自滅する 北川貴英

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 個性を伸ばして、自分らしく生きる。
 もしそれが成功への道だとしたら、個性のない者はどうしたら良いのだろう。
「自分らしさ」が見出せない者はどう生きたら良いのだろう。
「それはそれで、おもしろいんじゃない?」
この二人なら、そう答えそうな気がする。
『ひらめき教室 「弱者」のための仕事論』は、コミックス販売累計が2000万部を超す大ヒットマンガ『暗殺教室』の作者松井優征と、日本を代表するトップデザイナー佐藤オオキの対談本である。時代の寵児(以上の2文字にルビ・ちようじ)と言える二人だが、共通点と言えば個性なし、才能なし、友達なしとぱっとしないことばかり。やりたいこともなく、さらには自らを「客観的に見て、相当つまらない人間」と評するほどだ。そんな二人の「弱者」は会ったその場で意気投合し、一緒に野球観戦に行くほどの親密な間柄になったという。
 彼らは親友同士だからこそのくったくのなさで、お互いの仕事論にぐいぐいと切り込んでいく。天才、鬼才がひしめく世界で、どう生き延びていけば良いのか。そう試行錯誤してきた二人が到達した仕事術もまた驚くほど共通していた。それは端的に言えば「弱者戦略」だ。
 自分の弱さを受け入れるのは決して楽な体験ではない。しかし一度乗り越えてしまえばエゴの呪縛から脱却し、あわよくば強者を食ってしまうほどの力を手にすることができる。これは筆者が長年指導する「システマ」が目指すものと合致する。システマとは旧ソ連軍特殊部隊で編み出され世界各国に広まった軍隊武術だ。その創始者ミカエル・リャブコは「戦場では強い者から死んでいく」と語る。極限状況では自らを過信する者から自滅し、普段は地味で目立たない人物が生き残るのである。
 筆者には佐藤オオキと松井優征は、システマの生存戦略を時代の最先端という熾烈な戦場で実証した例に思えてならない。そのノウハウを詰め込んだ『ひらめき教室』は自信を持てないすべての「弱者」に希望をもたらすことだろう。

きたがわ・たかひで ● 公認システマインストラクター

青春と読書「本を読む」
2016年「青春と読書」4月号より

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極限状況では自らを過信する者から自滅する 北川貴英

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