前回の第8回から前編、後編に分けて、腸内細菌に関する患者さんや読者の皆さんの質問に答える形で、最新の情報を紹介しています。今回は前編のQ1~Q6に続いて、腸内細菌と睡眠、免疫細胞、酪酸、自分でできること、寿命、漢方薬、ピロリ菌との関係についてお答えします。
■Q7 「腸内フローラは睡眠に影響する」というのは本当?
睡眠の質は心身の健康に対して大きく影響することを、われわれは日常的に経験しています。
とくに、「睡眠障害」と逆流性食道炎や過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍(かいよう)性大腸炎といった消化管の病気との関連はしばしば報告されています(※1)。
そして最近では、睡眠と腸内フローラの間には切っても切れない関係があることが報告されています。
たとえば、2023年に北海道大学の研究で、睡眠時間が短い人ほど、腸の免疫を担うタンパク質の「抗菌ペプチド」の分泌が少ないことが報告されました(※2)。
この抗菌ペプチドが不足すると、腸内フローラは異常な状態になります。
腸内フローラの組成(細菌の組み合わせや量)の変化は、腸管の免疫系の重要な役割を果たす腸内細菌の代謝産物の「短鎖脂肪酸」などの減少と関連します。短鎖脂肪酸とは第7回・第8回でくり返し述べてきたように、心身の健康を維持するうえで注目されている物質です。
第8回では、腸内細菌の代謝産物は神経系、内分泌系(ホルモン系)、免疫系に関係すると言いました。また先ほど述べたように、睡眠時間が短いと腸内フローラはさまざまな影響を受けて、その代謝産物も変化します。すると、神経系、内分泌系、免疫系といった全身状態の好不調に影響する可能性があります。
一方で、10分の昼寝でリフレッシュできることもあれば、長時間寝ても疲れがとれないこともあるように、睡眠時間以外の要素も睡眠の質を考える上では無視できません。
よく知られるように、ヒトの睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、これらが約90分周期で交互に現れるといわれます。レム睡眠とは脳は覚醒状態に近いけれども体は休んでいる状態で、記憶や感情の整理、大脳の構築を担うとされます。一方、ノンレム睡眠は脳の休息や「成長ホルモン」の分泌に関係しています。
レム-ノンレムの90分周期というのはあくまで平均値であり、70~120分程度の幅があるともいわれます。「質の高い睡眠」に必要な時間は、個人によってかなり異なるわけです。
そして、腸内フローラはこのレム-ノンレム周期の調整に関係しているという報告があります。筑波大学と慶応大学の研究グループが、抗菌薬を投与して腸内細菌を減少させたマウスでは、ノンレム睡眠の時間が短く、レム睡眠が長くなっているというのです(※3)。
これは、腸内フローラが変化することで代謝産物が減少し、睡眠に影響するセロトニンやGABAといった神経伝達物質の量も減少し、睡眠の周期や睡眠時間に影響を与えるというものでした。
つまり、睡眠時間が腸内フローラを変化させるだけでなく、腸内フローラの変化も睡眠の質に影響を与えているということです。
これがヒトにどの程度あてはまるのかはまだわかりませんが、「睡眠時間が短いときはおなかの調子がよくない」「おなかの調子がよくないときは睡眠の質もよくない」という可能性が高いわけです。
そうしたことから、将来的には、「腸内細菌を調整して腸内フローラの状態をよくすることで、睡眠の質が改善できるようになる」ことが、期待されます。
■Q8 腸内細菌と免疫との関係が気になります。第7回で、「腸内細菌は、免疫細胞のひとつのTレグ(制御性T細胞。第6回・第7回参照)を生み出す歯車」ということでした。その腸内細菌とは具体的に何ですか? また、Tレグを増やす食事はありますか?
「Tレグ」とは、腸内細菌が免疫細胞に侵入者として排除されないように働きます。「制御性T細胞」という名のとおり、「免疫反応を制御するように働くT細胞の一種」です。免疫の働きを理解するうえで重要な存在です。その点は第6回で詳述したので参照してください。
Tレグは「T細胞」が遺伝子(FoxP3)の発現などいくつかの過程を経て成熟(分化)した細胞です。その成熟の道のりで、腸内細菌のうち、「クロストリジウム属」や「バクテロイデス属」が産生する「短鎖脂肪酸」、中でも「酪酸」が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
クロストリジウム属とバクテロイデス属は、ほ乳類の腸内細菌の中でも数が多いこともわかっています。Tレグが成熟していくことは、これらの菌自身を免疫細胞の攻撃から守るために必要なのかもしれません。
このほかにも「ビフィドバクテイウム属」のビフィズス菌や、「ラクトバシルス属」「ストレプトコッカス属」などの乳酸の産生に関わる菌も、Tレグの成熟に働くことがわかっています。
腸内細菌が短鎖脂肪酸を産生するために必要なのは食物繊維です。食物繊維といえば、腸内細菌のエサでもあります。クロストリジウム属の菌が定着したマウスに、食物繊維を多く、また、少なく含むエサを与えて比べたところ、多く与えられたマウスでのみ、Tレグの増加が観察されています(※4)。
もちろんこれがヒトでも同じ結果とは言えませんが、さまざまな研究の報告を考え合わせると、食物繊維を含む食品を摂取することは、腸内細菌による酪酸などの産生に影響し、結果的にTレグの成熟に関与しているのではないかと考えられています。
ただし、現時点ではTレグを増やすために1日に摂取すべき食物繊維の量に関する具体的な目安はありません。その点に注意が必要です。
1日の食物繊維の摂取量について、厚生労働省は「約20g(女性18g、男性21g)」と推奨しています。しかし、この摂取量はTレグの成熟に必要な量として計算されたわけではなく、栄養の偏りがない食生活に必要な量ということです。勘違いしないようにしましょう。
また、それぞれの人の腸にすむ細菌の種類や量は異なるため、厚労省が推奨する量をとったとしても、どれぐらいの量の酪酸が産生されて、その何割がTレグの成熟の歯車として働くのかまではわかっていません。
そもそも、ヒトの体はさまざまな細胞活動の絶妙なバランスの上に成り立っているので、Tレグを意図的に増やすことが、必ずしも健康にいいとも言えません。
このため、現時点ではTレグを増やすために食物繊維を含めた何か特定の食品を摂取することよりも、栄養の偏りがない食生活、生活習慣の見直しを実践することのほうが、健康にとって重要であると考えられます。
■Q9 「酪酸」とは具体的にどのような成分で、何に含まれるのですか? 何をどのようにどのぐらい食べれば腸の健康によいのですか?
酪酸は別名ブタン酸と呼ばれます。酪酸はバターから見つかったため、バターのラテン語(ブーテュールム:butyrum)にならってこの名が付いたと言われます。
いまでは酪酸はバター以外にも、牛乳や動物の脂肪、野菜の油にも含まれることがわかっています。
しかし実のところ、バターや牛乳に含まれている酪酸は少量です。酪酸を摂取するために、バターや牛乳をたくさん食べるという人もいるようですが、脂質の過剰摂取となるので勧められません。
酪酸は精製できるものの、精製された酪酸は非常に臭くて口から摂取するのは難しいと考えられています。銀杏の果肉部分が発する悪臭にもこの酪酸が関係しているようです。銀杏の果肉部分を大量に食べるのは難しいのと同じ感覚でしょう。
腸の健康のために、1日にどのくらいの量の酪酸をとればいいのかを示すガイドラインなどは、現時点ではありません。腸内細菌が酪酸を産生することを期待すると、Q8でも触れた、「厚生労働省が推奨する1日20g程度の食物繊維の摂取」を意識するのが現実的な目安だと考えます。
ただし、これもQ8で述べたように、個人の腸内細菌の量や組み合わせはそれぞれに違います。誰かと同じプレバイオティクス(有益と考えられる腸内細菌の増殖に役立つ、腸まで届く食品成分。第8回参照)を同じ量だけ食べたとしても、産生される酪酸を含む短鎖脂肪酸の量は異なるのです。
自分の体調や生活リズムを見つめながら、自分にとっての最適な摂取法を探すのが現実的な実践法でしょう。
■Q10 腸内フローラを改善するために自分ですぐにできる方法はありますか?
腸内細菌の多くは生後数日で腸にすみつき、腸内フローラをつくります。離乳期以後は腸内フローラが安定し、各個人に特有のパターンが生じるとされます。
もちろん食事や生活習慣、薬剤などが影響するため、腸内細菌の分類上(第7回参照)の「種」や「属」での変化はあるものの、「門」ではほぼ安定します。そして、第8回のQ4でも触れたように、その「門」も加齢に伴って変化します。
腸内フローラのメカニズムはまだわからないことが多いものの、日常生活では、運動、食事(とくに食物繊維などのプレバイオティクスの摂取)、喫煙やアルコールの節制、睡眠リズムを整えることなどが、便通をはじめとする腸の状態改善、腸内フローラの変化と関係すると報告されています。
つまり、腸内フローラの改善において自分でできることとは、そうした生活習慣を整えることになるのです。
ただし、食事に関して、第8回のQ2とQ5で触れたように、プロバイオティクスをうたう食品やサプリメントは安全性や品質、効果の検証が不十分な製品が多く、医学界でも問題視されています。これらの摂取で手っ取り早く腸内フローラを理想の状態に整えることは難しいことを覚えておいてください。
■Q11 「便秘の人は寿命が短い」という説は本当?
こういう報告があります。1980年代に行われたアメリカの研究で、過敏性腸症候群(IBS)、慢性便秘、慢性下痢、消化不良、腹痛のいずれかの腹部症状をもつ約4,000人について、2008年4月までに死亡した人を調べたところ、慢性便秘だけが生存率の低下と関連があったといいます(※5)。
また、2018年にアメリカで行われた別の研究では、約336万人の退役軍人を対象に便秘の有無を調査し、約7%が便秘と診断されました。そして、性別や年齢、他の病気や薬の使用、社会的な状況などを考慮して、便秘の患者とそうではない人を比較したところ、便秘の患者は死亡リスクが12%、冠動脈疾患の発症リスクが11%、脳梗塞の発症リスクが19%上昇していたと報告されています(※6)。
ただし、これらの結果だけで便秘の人は寿命が短いと言い切ることはできません。「慢性便秘症」の有病率は、国や地域、調査方法によってかなり異なりますが、およそ10~15%とされています(※7)。高齢になるほど便秘症の人の割合は増えるため、亡くなった人が偶然に便秘だった場合もあるわけです。
便秘の原因は性別、年齢、運動量、ほかの病気、薬の使用、食事の変化などさまざまですが、近年では腸内フローラの変化も注目されています。
たとえば、通常よりも排泄に時間がかかる硬い便には、腸内細菌の中でも「バクテロイデス属」が多いという報告や、糞便移植が便通異常の改善に関連しているという報告もあります(※8, 9)。
ただこれらの結果も、腸内フローラと便秘の関係性を示してはいるものの、具体的にどのような腸内フローラが便秘と関係しているのかはまだ明確ではありません。
これらのことから、「便秘の人は寿命が短い」という説は本当かどうかというと、その説のエビデンスは現時点でいくつかありますが、まだ強固なものではなく研究途上だといえるでしょう。第8回で述べたプロバイオティクスの研究が進展することで、便秘の治療にも新たな選択肢が増えることを期待しています。
■Q12 便秘改善のために漢方薬を飲んでいます。腸内細菌にどう影響するのですか? また、長く飲んでいても大丈夫?
腸内フローラの状態は、漢方薬の効果に影響を受けている可能性が報告されています(10, 11)。
たとえば、さまざまな西洋薬で下剤に用いられる成分のセンノシドは、漢方薬の下剤に含まれる「大黄(だいおう)」の主成分でもあります。
センノシドは無菌動物に投与しても下剤として働きません。しかし、腸内細菌の代謝(体の中で起こる化学反応で、主に食物などの成分が分解・合成される過程)によって腸のぜん動運動を促す成分に変化し、排便を促進することが報告されています(※10, 11)。
具体的には、センノシドは多くの腸内細菌がもつ酵素(βグリコシダーゼ)では代謝されず、ビフィドバクテリウム属など一部の嫌気性菌(空気中で活動しない菌の一群)などによって別の成分(レインアンスロン)に変換されることで、腸のぜん動を促すように働きます。
つまり、センノシドを代謝できる腸内細菌がいない、もしくは少ない場合は、下剤としてうまく働かないことがあるわけです。
なお、センノシドは刺激性下剤と呼ばれ、長期で服用すると耐性ができ、効きにくくなることが報告されています。それらのことから、長期間飲み続けるよりは、大腸内視鏡検査前や、ひどい便秘の際などの切り札にすることが推奨されます。
また、西洋薬の下剤にも含まれることがある芍薬(しゃくやく)の痛み止めの成分(ペオニフロリン)も、腸内細菌によって代謝されて、別の成分(ペオニタボリンI-IV)などに変換され、より強いけいれん作用を示すことが報告されています。
こうしたことから、漢方薬の特定の成分は、腸内細菌によって別の成分に変換され、体内で利用されたり、不要なものは排泄されたりしていると考えられます。
なお、漢方薬はゆっくり効く、安全といったイメージを持つ人も多いようです。しかし、漢方薬の中には前述の芍薬を含む芍薬甘草湯(かんぞうとう)のように、20~30分で効果が現れる薬もあります。また、間質性肺炎や薬剤性肝障害といった命にかかわる病気の原因となるケースも報告されています。
市販の便秘向きの漢方薬を、ダイエットのために大量に長く飲み続けている人もいると聞きます。
漢方薬の効果は人によって異なり、同じ人でも、時と症状によって変わります。そのため病院で漢方薬を処方する際には、「証」と呼ばれるその人の状態(体質・体力・抵抗力・症状など)を考慮します。ダイエットの必要がないのに、広告のイメージなどだけで市販の漢方薬を選ぶことには危険な面があることも知っておきましょう。
漢方薬だから効果が現れるまでに時間がかかる、長く飲んでも大丈夫だ、漢方薬だから安全だなどとは考えずに、まずは消化器内科や内科を受診し、必要な分だけ服用することが望ましいでしょう。
■Q13 胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因とされる「ピロリ菌」は、胃にすむ細菌と聞きます。検査で見つかって「除菌治療」をしているところですが、下痢をして困っています。腸にも影響するのですか?
ピロリ菌は胃にすむ細菌で、「ウレアーゼ」という酵素を持ち、アンモニアをつくり出しています。そのアンモニアが胃酸を中和し、ピロリ菌が生きやすい環境をつくっています。
このため、ピロリ菌がいない胃は非常に強い酸性環境(pH1~2)ですが、ピロリ菌がいると中程度の酸性環境(pH4~5)になります。
ピロリ菌がいないか、いた場合に「除菌治療」(後述)をすると、胃酸の影響が強くなって、逆流性食道炎が起きたり、悪化したりする可能性があります。また、それに伴って食道と胃の境界部に腺がんというがんが発症する可能性が高くなると指摘されています(※12)。
ただ、過剰に心配する必要はありません。そもそも食道がんの発症率は胃がんの約5分の1で、その中でも食道腺がんは日本人に多い食道の扁平上皮がんの10分の1以下です。つまり、胃がんのリスクに比べて食道腺がんのリスクが圧倒的に低いため、ピロリ菌の除菌が優先されるのです。
お尋ねの「腸内細菌への影響」についてですが、まず、ピロリ菌の「除菌治療」では数種類の抗生薬を服用しているでしょう。そうすると必然的に、腸内細菌の一部もともに駆除することになり、下痢や吐き気などの副作用が生じることがあります。
また、「除菌治療」の前後では胃の酸性度が強くなるため、胃酸が腸に流れ込んで腸の環境も多少は変化すると考えられます。
たとえば、ピロリ菌除菌後の腸内フローラの変化が、消化器の病気だけではなく糖や脂質の代謝にも変化を及ぼすという報告もありますが、詳しいしくみはわかっていません(※13)。
しかしながら、腸内フローラの変化によってその代謝産物の内容や量が変化し、内分泌系(ホルモン系。第3回参照)に影響を与えることは十分に考えられます(第7回参照)。
下痢や吐き気がひどい場合は、薬を変える、また「除菌治療」を中止する必要もあるので、がまんをせずにすぐに医師に相談してください。
ここでひとつ、ピロリ菌に関してしばしば聞かれることがあるので伝えておきます。「ピロリ菌の存在は井戸水からの感染か」ということです。
たしかに、井戸水からピロリ菌が検出されたという報告があるためか、この説はよく知られているようです。ただし、井戸水を飲んだヒトの胃にピロリ菌が見つかったからといって、井戸水が本当に感染源であったかどうかの因果関係は判明していません。
現在は、ピロリ菌は、幼少時に胃酸が十分に分泌されない時期に保護者などから唾液(だえき)などを介して経口感染し、胃にすみつくことが多いと考えられています。
胃酸がある程度分泌される大人になってから井戸水を飲んだからといって、ピロリ菌感染を起こす可能性は低いとされています。
腸内細菌や腸内フローラの詳細は多くのことが解明されてきましたが、「では実生活ではどうすればいいのか」についての謎は深まるばかりかもしれません。腸活が盛んにうたわれるのも、その疑問が多いからではないでしょうか。腸に関する個々の疑問には回答を得たとしても、ほかの臓器との関連や脳との相関を考えた場合、結局は生活習慣の適度な見直しこそが有用であると考えられるのです。
次回は、脳腸相関と深く関係する病気について見ていきます。
参考
(※1) Orr WC, Fass R, Sundaram SS, Scheimann AO. The effect of sleep on gastrointestinal functioning in common digestive diseases. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020;5(6):616-24.
(※2) .Shimizu Y, Yamamura R, Yokoi Y, Ayabe T, Ukawa S, Nakamura K, et al. Shorter sleep time relates to lower human defensin 5 secretion and compositional disturbance of the intestinal microbiota accompanied by decreased short-chain fatty acid production. Gut Microbes. 2023;15(1):2190306.
(※3) Ogawa Y, Miyoshi C, Obana N, Yajima K, Hotta-Hirashima N, Ikkyu A, et al. Gut microbiota depletion by chronic antibiotic treatment alters the sleep/wake architecture and sleep EEG power spectra in mice. Sci Rep. 2020;10(1):19554.
(※4) Furusawa Y, Obata Y, Fukuda S, Endo TA, Nakato G, Takahashi D, et al. Commensal microbe-derived butyrate induces the differentiation of colonic regulatory T cells. Nature. 2013;504(7480):446-50.
(※5) Chang JY, Locke GR, 3rd, McNally MA, Halder SL, Schleck CD, Zinsmeister AR, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 2010;105(4):822-32.
(※6) Sumida K, Molnar MZ, Potukuchi PK, Thomas F, Lu JL, Yamagata K, et al. Constipation and risk of death and cardiovascular events. Atherosclerosis. 2019;281:114-20.
(※7) 日本消化管学会. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 2023.
(※8) Vandeputte D, Falony G, Vieira-Silva S, Tito RY, Joossens M, Raes J. Stool consistency is strongly associated with gut microbiota richness and composition, enterotypes and bacterial growth rates. Gut. 2016;65(1):57-62.
(※9) Tian H, Ge X, Nie Y, Yang L, Ding C, McFarland LV, et al. Fecal microbiota transplantation in patients with slow-transit constipation: A randomized, clinical trial. PLoS One. 2017;12(2):e0171308.
(※10) Hattori M, Kim G, Motoike S, Kobashi K, Namba T. Metabolism of sennosides by intestinal flora. Chem Pharm Bull (Tokyo). 1982;30(4):1338-46.
(※11) Kobashi K, Nishimura T, Kusaka M, Hattori M, Namba T. Metabolism of sennosides by human intestinal bacteria. Planta Med. 1980;40(3):225-36.
(※12) 天野 祐, 安積 貴, 坪井 優, 本告 成, 石村 典. 本邦におけるBarrett食道癌の疫学 現況と展望. 日本消化器病学会雑誌. 2015;112(2):219-31.
(※13) Roca-Rodríguez MM, Coín-Aragüez L, Cornejo-Pareja I, Alcaide J, Clu-Fernández C, Muñoz-Garach A, et al. Carbohydrate metabolism improvement after Helicobacter pylori eradication. Diabetes Metab. 2016;42(2):130-4.
構成:阪河朝美/ユンブル
「腸は第二の脳」という言葉が知られてきたが、最近の研究でそのメカニズムが医学的に説明できるようになってきた。そのエビデンスをもとに、ストレス関連消化管疾患の治療に、精神神経系疾患のうつ病や不安障害ケアの心理療法「認知行動療法」を取り入れる治療が始まっている。同治療法の研究者である消化器病専門医の著者によるこの研究成果と治療法、セルフケア法を一般に分かりやすく伝える。
プロフィール
菊池志乃
きくち・しの 名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター助教。京都大学大学院医学研究科・健康増進・行動学分野・客員研究員。医学博士。消化器病専門医。消化器内視鏡専門医。京都大学大学院医学研究科博士課程医学専攻修了。高知大学・医学部医学科卒。岸和田徳洲会病院、天理よろづ相談所病院、高槻赤十字病院、京都大学医学部付属病院、京都大学大学院医学研究科特定助教を歴任。専門は過敏性腸症候群と認知行動療法。2022年、日本初の過敏性腸症候群に対する集団認知行動療法の大規模ランダム化比較試験を実施し、有効性を報告した。現在、名古屋市立大学にて過敏性腸症候群の臨床試験を実施中(https://suciri.localinfo.jp/)。